昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (三十四)

2010-12-12 11:18:01 | 小説
「いや、いやあぁぁ!」
そんな娘の叫び声は、
男共の劣情をそそらずにはいません。
「やめて、やめてえぇぇ!」
娘の懇願の声も、
男共の嬌声にかき消されてしまいます。
いえ、
娘の懇願の声が、
更に男共の凶暴さに
火を点けるのでございます。

何ということでしようか。
娘が、
私の娘が・・・。
男共に
陵辱されているのでございます。
泥で汚れた手が、
ごつごつとした手が、
娘の漆黒の髪を掴んでおります。
気も狂わんばかりでございます。

「待てっ!
待てっ!
待ってくれ!
それだけは、
止めてくれ。
今までのことは、
許そう。
水に流そう。
後生だから。
それだけは、
それだけは、
止めてくれえいぃぃ!」

断じて許すことはできません。
八つ裂きにしても足りない男共でございます。
もう私には気力がございません。
お話しする気力が、
ございません。
もう、
このまま死にたい思いでございます。
まさしく地獄でございます。

・・・地獄?
そう、
地獄はこれからでございました。
実は不思議なことに、
男共には
顔がなかったのでございます。
勿論、
その男共を私は知りません。
見たことがありません。
だから顔が無い、
そうも思えるのではございます。

しかし・・・。
そうですか、
お気づきですか?
ご聡明なあなた様は、
全てお見通しでございますか・・。


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