しびれを切らした門人たちが、口々に
「遅い、遅いのお」「怖じ気づいたのであろう」
「刻限は伝えてあるよな」「もしかして文字が読めぬのか」と大きく笑いだした。
大地からの冷気が身体を冷やしていく。
足を踏みならす者や指に息を吹きかける者、互いの体をぶつけ合って暖をとる者もいた。
「少しは落ち着かぬか、見苦しいぞ」
「されど、こう冷えましては」
梶田の声かけにも、門人たちは従うことなく体を動かしつづけた。
「ムサシだ、ムサシが居るぞ!」
「せんせえい。ムサシが、後ろに」
本堂の欄干に足をかけたムサシがいた。
獣の皮で作った肩掛けで体を冷やさぬようにしている。
更に足首にも巻き付け、手には手ぬぐいが巻かれている。
「なんとも面妖な、まるで猟師ではないか。軟弱者が!」
一人の門人があざ笑った。
「これは笑止な。
肩や手を冷やすなど、武芸者たる者のなすべき事か。
なるほど分かったぞ。なればこその、なよなよ剣法か」
遠巻きにしている見物人にも聞こえよとばかりに、ムサシが声を張り上げた。
いきり立つ門人たちを制して、梶田が清十郎に耳打ちをした。
「これがムサシの手でございましょう。
どうぞ、お気になさらぬように。
怒りにお心を囚われては、剣に陰りが生まれまする」
「分かっておる。案外にムサシなる者、兵法者のようだな」
「遅い、遅いのお」「怖じ気づいたのであろう」
「刻限は伝えてあるよな」「もしかして文字が読めぬのか」と大きく笑いだした。
大地からの冷気が身体を冷やしていく。
足を踏みならす者や指に息を吹きかける者、互いの体をぶつけ合って暖をとる者もいた。
「少しは落ち着かぬか、見苦しいぞ」
「されど、こう冷えましては」
梶田の声かけにも、門人たちは従うことなく体を動かしつづけた。
「ムサシだ、ムサシが居るぞ!」
「せんせえい。ムサシが、後ろに」
本堂の欄干に足をかけたムサシがいた。
獣の皮で作った肩掛けで体を冷やさぬようにしている。
更に足首にも巻き付け、手には手ぬぐいが巻かれている。
「なんとも面妖な、まるで猟師ではないか。軟弱者が!」
一人の門人があざ笑った。
「これは笑止な。
肩や手を冷やすなど、武芸者たる者のなすべき事か。
なるほど分かったぞ。なればこその、なよなよ剣法か」
遠巻きにしている見物人にも聞こえよとばかりに、ムサシが声を張り上げた。
いきり立つ門人たちを制して、梶田が清十郎に耳打ちをした。
「これがムサシの手でございましょう。
どうぞ、お気になさらぬように。
怒りにお心を囚われては、剣に陰りが生まれまする」
「分かっておる。案外にムサシなる者、兵法者のようだな」
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