昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (三) 三十路も終わりに近づいているママではあったが

2014-10-12 18:26:08 | 小説
三十路も終わりに近づいているママではあったが、子供を産んでいないせいか体の線は崩れを知らなかった。
張りのある乳房はお椀型で、「Fカップよ!」と自慢するだけのことはあった。
腰回りにしてもこの年代としては細く、適度にくびれている。
もっともお尻のサイズのビッグさは隠しようもないが。
「安産型なの!」と強調するところをみると、多少は気にしているのかもしれない。

足は自慢の種で、スラリとしていて足首はしっかり引き締まっている。
店ではもっぱら着物姿だが、休日にはミニスカートをはいている。
「街を歩いていると、未だに若い男に声を掛けられるのよ」と、嬉しそうに井上に話したりもした。
「物欲しげに歩いているからサ」と茶化してはみるのだが、確かに若く見える。
少し前に突然デパートにお客様然として現れ、一瞬見間違えたこともあった。

久しぶりの逢瀬だったせいか、その夜のママの乱れぶりはついぞ知らぬママだった。
あらん限りの嬌声を発し、しっかりとした防音だとはいえ隣の部屋に聞こえはしないかとさえ思えた。
「ユミよ、ユミのせいよ。あの二人、どうしてるかしら」
「大丈夫だろうさ。ユミがうまくリードしてくれてるよ。
男の場合は、その道のプロにお願いした方がいい。昔は、そうだったんだから」

感慨深げに呟く井上の脳裏に己の儀式が思い出され、思わず「ふふん!」と鼻を鳴らしてしまった。
「何よ、ケンちゃん。何を思い出してるの? もう!」
「いやいや、自分のことを思いだしていたんだ」
「そう言えば、ケンちゃんの初体験は遅かったのよね? えっと、何歳だっけ?」
「 いいじゃないか。今更、話したくないよ」
と拒否はしたものの、脳裏にまざまざと浮かんできた。



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