(三)
“玄関はいただけないが、中はいいじゃないか。
キチンと掃除も行き届いているし、壁に挿してあった一輪挿しも見事なものだった。
部屋にしても確かに古くはあるが、歴史といったものを感じさせてくれる。
こういうものを、風情と言うのだろう。
床の間の生け花も、心を和ませてくれる。
あたしってきれいでしょ! と威張る風でもなく、溶け込んでいる”
「お花、お好きなのですか?」
じっと花に見入っていた武蔵に、ぬいが声をかける。
「いや、それほどでも。
美しい花がでしゃばることなく、ただそこにあるといった感じなのでね。
見惚れてしまったんです。
どちらかというと……」
「どちらかというと、なんでございましょう? 分かりました、花より団子でございますね?」
武蔵の言葉を遮って、ぬいが言う。
相変わらずにこやかにぬいが言う。
お客の言葉をさえぎるなど、女将としては失点ものだ。
しかし武蔵との言葉の掛け合いが楽しくてならないぬいだ。
「外れです、女将。
そりゃ料理も気になるが、僕が一番に気にするのは、何といっても女将です。
顔ですから、旅館の。
女将が気持ち良い女かどうか、それを一番に見ます。
そう、旅館の華ですよ」
「あらまぁ、怖いことを。で、あたくしは如何でしょう?
及第点はいただけますでしょうか?」
“玄関はいただけないが、中はいいじゃないか。
キチンと掃除も行き届いているし、壁に挿してあった一輪挿しも見事なものだった。
部屋にしても確かに古くはあるが、歴史といったものを感じさせてくれる。
こういうものを、風情と言うのだろう。
床の間の生け花も、心を和ませてくれる。
あたしってきれいでしょ! と威張る風でもなく、溶け込んでいる”
「お花、お好きなのですか?」
じっと花に見入っていた武蔵に、ぬいが声をかける。
「いや、それほどでも。
美しい花がでしゃばることなく、ただそこにあるといった感じなのでね。
見惚れてしまったんです。
どちらかというと……」
「どちらかというと、なんでございましょう? 分かりました、花より団子でございますね?」
武蔵の言葉を遮って、ぬいが言う。
相変わらずにこやかにぬいが言う。
お客の言葉をさえぎるなど、女将としては失点ものだ。
しかし武蔵との言葉の掛け合いが楽しくてならないぬいだ。
「外れです、女将。
そりゃ料理も気になるが、僕が一番に気にするのは、何といっても女将です。
顔ですから、旅館の。
女将が気持ち良い女かどうか、それを一番に見ます。
そう、旅館の華ですよ」
「あらまぁ、怖いことを。で、あたくしは如何でしょう?
及第点はいただけますでしょうか?」
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