昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

鼠小僧次郎吉 ~さると猿回し~ 八

2010-07-14 22:35:14 | 小説
そして、
次郎吉の手の中に入れるやいなや、
一目散に駆けだした。

次郎吉は苦笑いをしながら、
手の中のリンゴの
かわいらしい歯形を
見つめた。

“俺っちのような、
半端者になるんじゃねぇぞ。”と、
子どもの後ろ姿に呟いた。

そこかしこから
拍手が沸く。
苦笑いを見せつつ、
着物の裾を端折った。

「お兄さん、
気風がいいじゃないか。
男だねえ!」
小料理屋の二階から
声がかかった。

途端に
次郎吉は不機嫌な顔になり、
「真っ平ご免でえぃ!」と
駆け出した。

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