通夜の席でのことだ。
安らかな表情で横たわるシゲ子の枕元で、憔悴しきった孝道が座っている。
その横に孝男が陣取り
「西本さんだよ、福井さんだよ…」
と耳元で告げている。
「うんうん」
と頷きながらも視線はシゲ子に注がれたままだ。
孝男の横には長男と次男がかしこまっている。
長男が如才なくお辞儀をするのに対し、次男はじっと俯いたままでぐっと口を閉じている。
反対側には縁者たちが陣取っている。
八十を過ぎてのことだから大往生だと囁き合っている。
孝道もまた、そう思っている。
思ってはいるが、ひとり取り残されたという思いは消えない。
そしてまたこれからの事を考えたとき、一抹の不安を感じている。
「これからどうする。こっちに来るかい」
と孝男が声をかけた。
あと二年もすれば八十になる孝道だが、まだ体はかくしゃくとしている。
時折物忘れはするが、まだ独り暮らしができると思っている。
そしてこの先どうにもならなくなったとしても、孝男夫婦の家に入ることはすまいと思っている。
道子に己の世話までさせるべきではないと、固く決めていた。
安らかな表情で横たわるシゲ子の枕元で、憔悴しきった孝道が座っている。
その横に孝男が陣取り
「西本さんだよ、福井さんだよ…」
と耳元で告げている。
「うんうん」
と頷きながらも視線はシゲ子に注がれたままだ。
孝男の横には長男と次男がかしこまっている。
長男が如才なくお辞儀をするのに対し、次男はじっと俯いたままでぐっと口を閉じている。
反対側には縁者たちが陣取っている。
八十を過ぎてのことだから大往生だと囁き合っている。
孝道もまた、そう思っている。
思ってはいるが、ひとり取り残されたという思いは消えない。
そしてまたこれからの事を考えたとき、一抹の不安を感じている。
「これからどうする。こっちに来るかい」
と孝男が声をかけた。
あと二年もすれば八十になる孝道だが、まだ体はかくしゃくとしている。
時折物忘れはするが、まだ独り暮らしができると思っている。
そしてこの先どうにもならなくなったとしても、孝男夫婦の家に入ることはすまいと思っている。
道子に己の世話までさせるべきではないと、固く決めていた。
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