“ニヤリ”
蓋を開ける。
山吹色の小判がザックザック、
と思いきや、
二十両と三十両の束のみが入っているだけだ。
他の箱はどれも空。
“チッ!”
次郎吉は、
舌打ちをしながら懐に入れた。
次郎吉の盗み歴は、
文政六年に始まる。
戸田釆女正の屋敷に押し入った時、
土蔵の戸前口の網戸の下板をはぎとって入り込み、
四百二・三十両を盗んだこともあったが、
他ではそれ程盗んではいない。
大方は、
長局奥向での金子で足りた。
が、
今度ばかりは、
もう少し欲しかった。
借金を重ねていたのである。
容赦のない取り立てにあっていた。
「シケてやがる。」
期待はずれの、
腹立たしい気持ちのまま蔵を出た。
蓋を開ける。
山吹色の小判がザックザック、
と思いきや、
二十両と三十両の束のみが入っているだけだ。
他の箱はどれも空。
“チッ!”
次郎吉は、
舌打ちをしながら懐に入れた。
次郎吉の盗み歴は、
文政六年に始まる。
戸田釆女正の屋敷に押し入った時、
土蔵の戸前口の網戸の下板をはぎとって入り込み、
四百二・三十両を盗んだこともあったが、
他ではそれ程盗んではいない。
大方は、
長局奥向での金子で足りた。
が、
今度ばかりは、
もう少し欲しかった。
借金を重ねていたのである。
容赦のない取り立てにあっていた。
「シケてやがる。」
期待はずれの、
腹立たしい気持ちのまま蔵を出た。
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