(九)
「お姉さん、いや、お嬢さん。
話をさせてやってもらえませんか。」
両手を大きく広げて、マジシャンがお手上げだとばかりのポーズを見せた。
口に指を立てるマジシャンだが、ひとみの独演は止まらない。
「この箱に入って、体を横たえるのね。
それじゃ皆さん、さようなら。
二階の正坊、今夜はありがとう。
もしこのまま還らぬ人になったら、お線香の一本でもお願いね。」
「よぉし、分かった。
俺たちも、お焼香させてもらうよ。」
「お経は任せとけ。
偉ーいお坊さんに上げてもらえるように、頼んでやるぞ。」
と、あちこちから声がかかる。
「正坊!好きよ、正坊。
もしこの世に戻って来られたら、恋人にしてね。」
泣きまねをしながらの仕草に、どっと歓声が上がった。
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