昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十一)の八

2013-05-16 21:21:34 | 時事問題
(八)

「…と言うことで、どなたかいらっしゃいませんか?」
助手の女性が、大きく手を広げている。

「はぁい! うち、うち、やりたーい。」
と、ひとみが立ち上がった。

「おいおい、分かってるのか?」
「体を鋸で切られるのよ、くふふ…」

唖然とする正三たちを後目に、るんるんとステージに向かっていく。

「話をしてたのに、聞こえてたってこと?」

不思議がる正三たちに、薫が答えた。

「耳に入るのよ、自然に。
目配り、気配りしてなんぼの世界だからさ。」

「それ、切れるの? ちょっとそこの木を、切ってみて。
えぇ、ほんとに切れるんだ。恐くなってきたわ、うち。

大丈夫なのよね、死ぬことはないわよね。
まだ男を知らないんだから、今夜は処女よ。」

マジックの内容を説明している助手の声を掻き消さんばかりに、
ひとみが喋りまくる。


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