(十)
「俺がなってやるよ。」
「いやいや、僕に任せなさい。
極楽に送ってあげるから。」
突然に、正三が立ち上がった。
「いや! 今夜は正坊がいい! でも、明日は貴方かしら?
うちを指名してくれる殿御さんが良いわ!」
もうマジックどころではない、ひとみ一人に掻き回されている。
憮然とした表情のマジシャンも、あきらめ顔に変わっている。
「ひとみ! 今夜も明日も、明後日も来るぞ!
今から僕が、ひとみの恋人だ!」
こんな正三など、誰も見たことがない。
皆、思わず顔を見合わせて、口をパクパクさせるだけだ。
こんな正三は、誰も知らない。
当たり前だ、当の正三すら知らない。
“酔いのせいだ。”
誰もがそう思った、正三自身も思った。
他の誰よりも、正三自身が今の己に戸惑った。
「俺がなってやるよ。」
「いやいや、僕に任せなさい。
極楽に送ってあげるから。」
突然に、正三が立ち上がった。
「いや! 今夜は正坊がいい! でも、明日は貴方かしら?
うちを指名してくれる殿御さんが良いわ!」
もうマジックどころではない、ひとみ一人に掻き回されている。
憮然とした表情のマジシャンも、あきらめ顔に変わっている。
「ひとみ! 今夜も明日も、明後日も来るぞ!
今から僕が、ひとみの恋人だ!」
こんな正三など、誰も見たことがない。
皆、思わず顔を見合わせて、口をパクパクさせるだけだ。
こんな正三は、誰も知らない。
当たり前だ、当の正三すら知らない。
“酔いのせいだ。”
誰もがそう思った、正三自身も思った。
他の誰よりも、正三自身が今の己に戸惑った。
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