昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

心象風景  第三弾:【ある時の彼女】 (九)

2010-05-30 12:26:26 | 小説
(列車はホームに)

列車はホームに入っている。
もう、
出発だ。

時間がない、
乗り遅れてしまう。
自分の将来が危うい。

“さぁ、
子どもをおろして早く列車に!”
彼女の脳裏を走る。

・・・、
しかし彼女は、
子どもをあやしつづけた。

子どもは、
彼女の体のぬくもりを感じ
ようやく泣きやんだ。

シャクリあげながら、
何度も何度も手で目をこすった。
彼女はハンカチを取り出し、
子どもの涙を拭いてやった。

子どもはそのハンカチを邪魔くさそうに、
手ではねのけようとする。
しかし、
彼女はお構いなしに優しく拭いた。

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