昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(十三)の三

2011-08-12 21:21:46 | 小説
しかし小夜子には、
そんなアナスターシアの気持ちが、痛いほどに良く分かった。
家族愛の渇望、小夜子もまた同じだった。
母からの愛情に飢えて育った幼児期、そして突然の別れ。
気持ちの整理がまるで付いていない。
労咳に罹っていた澄江。
小夜子を出産したことから、一気に噴き出した。
日に日に病状が悪化し、医者もサジを投げてしまった。
「もう、薬を変えるしかない。
しかしそれで治るかどうか、・・」と、言葉を濁した。
「どんな薬ですか?」と聞きはしたものの、
あまりに高価すぎて、茂作には手が出ない。
ミツのことが頭を過ぎり、何としてでもと金策に走るが、
「可哀相じゃが、金のことはのぉ・・。」
「何ぞの、祟りじゃないのか?
ミツさんに続いて娘の澄江までとは。」
そんな囁きがあちこちで聞かれ、誰も関わりを持ちたがらなかった。


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