昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(十三)の四

2011-08-15 13:07:56 | 小説
兄である本家の繁蔵も、
「分家の嫁如きに、大枚の金員を遣うことなど罷りならん!」という、
大婆の意向には逆らえない。
澄江の実家からも、やむを得ぬ仕儀じゃとの声が聞こえてくる。
茂作の唯一人の味方である初枝から、
「これで栄養を、な。」と渡される卵だったが、
それすら大婆に止められてしまった。
「永くはない、好きなことをさせてあげなされ。」
そう宣告されてから、二年を頑張り続けた澄江だった。
小夜子の入学を見届けたいという、執念の澄江だった。
“家がビンボーだから、誰も助けてくれない。
金持ちにならねば、本家に嫁がねば、殺されてしまう。”
偽らざる、小夜子の思いだった。


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