昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(九十) フルバンドを楽しみたい気分だわ

2014-06-25 19:25:06 | 小説
(十二)

小食ではあるが、何も食べないということはない小夜子だ。
たくさんの種類を並べて、少しずつ箸を付けるのが小夜子の常なのだ。

「大丈夫よ。さ、キャバレーに行くわよ。フルバンドを楽しみたい気分だわ、今夜は」

「今夜は、お帰りになられては如何ですか。又という日もありますし。
少しお顔の色がお悪いように見えます。社長に叱られます、これでは」

「大丈夫だって! 梅子姉さんに聞いてもらいたいの、今夜は。
それで、少し武蔵を叱ってもらいたいの。もう少し浮気を控えろってね。
出張のたびに浮気をするんじゃ、ない! ってね」

「ですから、今夜はそのようなことは」
「今夜はなくても、昨夜にあったの。それとも、明日?」

「おかしいなぁ、今夜は。
お酒を飲まれたわけでもないのに、どうもお顔の色はすぐれないし、ふらつきもみえるし」

「そうね。少し、酔ってるかもね。隣の席のウィスキーに酔ったのかもね。
素敵なご夫婦だったじゃない? 一年に一度の結婚記念日、然も銀婚式だって。
奮発しての、お食事だって仰って。羨ましいわ、ほんとに。
竹田! あたし、武蔵と銀婚式できるかしらね? その前に、別れてるかもね」

竹田に対して初めて泣き言をもらす小夜子だった。
「さ、行くわよ。梅子姉さんのお店に、レッツゴー!」


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