昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十六) 傀儡にされるのでは? 

2014-05-12 21:15:36 | 小説
(六)

“自分が組合長?”

満更でもない山勘だが、傀儡にされるのでは? という危惧もある。
その反面、この若造を抑え付けられるという自負もある。

「そりゃねえ、あんたよりは年はくってるよ。
創業も、何てったって明治時代にまでさかのぼる。

老舗中の老舗ですよ。けどねえ、この話はあんたが立ち上げたんだしねえ。
他のみんながね、何と思うだろうかね。

今お話を頂いてもね、単なる神輿に見られてしまわないかねえ。
初めからあたしも参画してリゃね、話に乗りやすくはあるけどねえ」

暗に、傀儡は嫌だよと告げる。
そして、組合設立の話の発起人としての立場を強く打ち出せと迫りもした。

“ちっ、この狸親父が。まあ、初めのうちは立ててやるよ。
しかしま、二三年後には、俺の思い通りにさせてもらうぜ”

「勿論のことです。あたしの独断で動けるものじゃありません。
第一、この話は山勘さんから出たことじゃありませんか。

お忘れですか、あの夜のこと。
で、ですね。副組合長には、田口商事さんと内海商店さんにお願しようかと考えているんです。

勿論、山勘さんのご承諾を得られたらの話しですが。
私、私ですか?私は一兵卒で結構ですよ」

「いいのかい、それで?」

半信半疑の表情を見せつつも、武蔵を睨みつける眼光は鋭かった。

“若造には、荷が重かろうさ”
そんな思いが、ありありと顔にあらわれていた。


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