昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十六) 組合作りに奔走

2014-05-11 18:13:15 | 時事問題
(五)

百貨店に対抗する為の組合作りに奔走し始めた武蔵だったが、その反応は鈍いものだった。

「その趣旨や良し」
と賛同するのだが、設立の段になると二の足を踏み始めた。

富士商会の独壇場になるのではないか、との危惧が消え去らないでいた。
日の本商会との商い戦に勝利して以来、物言えぬ状態になってしまっていた。

「富士商会の奴、調子に乗りやがって」
「みんな、殿さまの家来になっちまったよ」
「百貨店にも腹が立つが、富士商会の意のままにってのも…」
等々、愚痴のこぼし合いだ。

「御手洗さん、少し緩めなさい。このままじゃ、あんたひとり、浮いてしまうよ。
同業者間で、あんた、殿さまって称されているとか。信長さまともね」

「何言ってるんです、私にそんな気はありませんよ。
山勘さん。今日お伺いしましたのは、他でもありません。

組合の代表のことなんです。どうにも誤解が多くて、困り果てているんです。
組合長にはね、山勘さん。あなたになって頂きたいんですよ。

私は若輩だし、正直のところ敵も多い。
とてもじゃないが、私ではまとめきれません。

そんなことぐらい、いくら何でも承知していますよ。
その点山勘さんは老舗だし、人望も厚い。あなたしか居ませんって」


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