昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第一部~(八)の五

2011-05-29 17:18:08 | 小説
気になっていたことを口にした茂作だった。
まさか病気をして、
それが原因でむくみが出たのでは?と、
思ってしまったのだ。
「そうなの・・それでなの。」
まさか、
という返答が返ってきた。
「そうなのって、澄江。
太ったからと、
追い出されたのか?」
「いや、
そうじゃなくて・・」
口ごもってしまった澄江は、
中々次の言葉を発しなかった。
「はっきり言うてみぃ。
どうした?」

実のところ、
茂作の頭の中に二文字が渦巻いてた。
女が男についていったのだ、
当たり前のことなのだが、
どうしても、
茂作も口にして聞くことができなかった。
「実は、実は・・
赤ちゃんができたの。
慶次郎さんの赤ちゃんが。」
「なに!
それじゃ、なにか!
澄江が身ごもったから、
働けなくなったから、
それだから追い出されたと言うのか!」
つい大声を出してしまった。
澄江を詰るような大声を。
澄江は体を小さくし、
俯いた。
「なんてひどいことを・・」
吐き捨てるように言うと、
カッと目を見開いて澄江に問い質した。
「今、
どこで興行してる。
直談判してくる。
澄江は、
ここで待ってなさい。
この家から一歩も出るんじゃない。」


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