(六)
「社長…あたしは…」
暗く沈んだ声で、五平がポツリポツリと話し始めた。
「あたしは、いや、あたしなんかが居ても良いんですかね?
厄介者じゃないかと、そう思え始めて…」
口を挟みかける武蔵を制して、五平が続けた。
「竹田の奴も、一端になってきましてね。
もう、あたしの指示なしでも、何でもこなせるようになりました。
徳子との二人三脚で、経理もきちっとやってますし。
徳子も、あたしなんかより竹田との方がやりやすそうですし。
最近じゃ、仕入れの方も社長にお任せしっ放しですし。
なんだか、あたしの居場所がね、なくなっちまったようで」
思いもかけぬ言葉だった。
確かに、今、仕入れは武蔵の仕事になっている。
GHQとの繋がりが切れた今、五平の存在価値は低くなってきた。
そんな五平の思いに気付かなかったことに、
武蔵も己の動物的勘といったものが薄れつつあることに改めて気付かされた。
思えば、日の本商会の件がそのことの警告だったのかもしれない。
小さなつまずきが、大きな落とし穴を呼ぶこともある。
そのことは、武蔵が一番分かっていることだったはずだ。
思い出したくない辛い思い出が、武蔵を苦しめた一件が思い出される。
----------------
[お知らせ]
ここで、一旦、休止とさせていただきます。
大まかな筋立てはできていますので、さほどの時間をおかずに再開出来ることと思います。
このまま一気に行こうかとも思いましたが、
[文芸長良]という同人会に参加させていただいたことやら、
各文学賞への応募等に、現在時間を割いております。
といいましても、ブログを休止するということではなく、
そもそものスタートでありました、
旧タイトル「ふたまわり」の第一部を掲載させてもらいます。
二十代前半に書き上げた作品でして、何となく書き足し始めたところ、
当初の思いとは違った作品となっていきました。
武士という大学生の恋愛模様を描いていたのですが、今では
もうお分かりと思いますが、小夜子という女性の半生記となっています。
最終的には、[花子とアン]ではありませんが、一代記となりそうです。
小夜子が息を引き取るまでを、描いていくつもりです。
まだまだ何年もかかるであろう、ライフワークとなりそうです。
では、明日からの新章をお楽しみに。
「社長…あたしは…」
暗く沈んだ声で、五平がポツリポツリと話し始めた。
「あたしは、いや、あたしなんかが居ても良いんですかね?
厄介者じゃないかと、そう思え始めて…」
口を挟みかける武蔵を制して、五平が続けた。
「竹田の奴も、一端になってきましてね。
もう、あたしの指示なしでも、何でもこなせるようになりました。
徳子との二人三脚で、経理もきちっとやってますし。
徳子も、あたしなんかより竹田との方がやりやすそうですし。
最近じゃ、仕入れの方も社長にお任せしっ放しですし。
なんだか、あたしの居場所がね、なくなっちまったようで」
思いもかけぬ言葉だった。
確かに、今、仕入れは武蔵の仕事になっている。
GHQとの繋がりが切れた今、五平の存在価値は低くなってきた。
そんな五平の思いに気付かなかったことに、
武蔵も己の動物的勘といったものが薄れつつあることに改めて気付かされた。
思えば、日の本商会の件がそのことの警告だったのかもしれない。
小さなつまずきが、大きな落とし穴を呼ぶこともある。
そのことは、武蔵が一番分かっていることだったはずだ。
思い出したくない辛い思い出が、武蔵を苦しめた一件が思い出される。
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ここで、一旦、休止とさせていただきます。
大まかな筋立てはできていますので、さほどの時間をおかずに再開出来ることと思います。
このまま一気に行こうかとも思いましたが、
[文芸長良]という同人会に参加させていただいたことやら、
各文学賞への応募等に、現在時間を割いております。
といいましても、ブログを休止するということではなく、
そもそものスタートでありました、
旧タイトル「ふたまわり」の第一部を掲載させてもらいます。
二十代前半に書き上げた作品でして、何となく書き足し始めたところ、
当初の思いとは違った作品となっていきました。
武士という大学生の恋愛模様を描いていたのですが、今では
もうお分かりと思いますが、小夜子という女性の半生記となっています。
最終的には、[花子とアン]ではありませんが、一代記となりそうです。
小夜子が息を引き取るまでを、描いていくつもりです。
まだまだ何年もかかるであろう、ライフワークとなりそうです。
では、明日からの新章をお楽しみに。
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