牧子はアパートの住人に対して、彼を従兄弟として紹介した。
彼の心の負担を軽減してやりたかったのだ。
彼が足繁く通うことで、まさかとは思うのだが、警察官としての立場を悪くしてはと考えたことも一因だった。
そして彼に対しても、
「お母さんには、“大学のお友だちの所で泊まってる”とでも言ってね。
そうそう、管理人のおばさんにも釘を刺しておいてね。
口が軽い人だからさ。あたしの所で泊まってるなんて、絶対言っちゃだめよ」
と、念を押した。
「わかった、そういうことにしておくよ。大丈夫、ダイジョーブ!」
と、おどけて答える彼だった。
「それとも、お姉さんのところに来る? 灯りの点いてるお部屋に帰りたいのよね、お姉さんとしては」
彼をのぞき込むようにして、冗談っぽく牧子が問いかけてきた。
思いもかけぬことに、なんと返事をして良いのか分からぬ彼だった。
“女性と一緒に住む? 結婚するってことか。お母さんに知られたら…”
「そ、それは…」
戸惑いを見せる彼に対し
「ごめん、ごめん。冗談が過ぎたわね」
と、彼を抱き寄せる牧子だった。
なぜ素直に、牧子の申し出を素直に受け入れなかったのか。
母親のことだけが理由だけではなかった。
「友人との共同生活を始めるから」と告げれば、それ以上の詮索はしない母親の筈だった。
彼に対して盲目的な愛情を捧げる母親が、彼の行動を縛る筈がなかった。
牧子との生活を始めることに何の支障も無い彼だったが、ためらいがあった。
いささか古風な彼にしてみれば、生活の全てを牧子に依存することに、抵抗感があった。
しかしそれとて、幾ばくかの食費を入れれば済むことだ。
漠然とした不安が彼の心の中にあり、打ち消すことができなかった。
牧子が年上だからということではなく、牧子に対する想いが薄らいだからでもない。
それどころか、牧子に対する想いは益々強まっていた。
彼に対する牧子の細やかな心遣いが、彼をして牧子に対する想いを強くさせた。
昨夜の、目くるめく快感は凄まじいものだった。
牧子に、翻弄された彼だった。
彼の心の負担を軽減してやりたかったのだ。
彼が足繁く通うことで、まさかとは思うのだが、警察官としての立場を悪くしてはと考えたことも一因だった。
そして彼に対しても、
「お母さんには、“大学のお友だちの所で泊まってる”とでも言ってね。
そうそう、管理人のおばさんにも釘を刺しておいてね。
口が軽い人だからさ。あたしの所で泊まってるなんて、絶対言っちゃだめよ」
と、念を押した。
「わかった、そういうことにしておくよ。大丈夫、ダイジョーブ!」
と、おどけて答える彼だった。
「それとも、お姉さんのところに来る? 灯りの点いてるお部屋に帰りたいのよね、お姉さんとしては」
彼をのぞき込むようにして、冗談っぽく牧子が問いかけてきた。
思いもかけぬことに、なんと返事をして良いのか分からぬ彼だった。
“女性と一緒に住む? 結婚するってことか。お母さんに知られたら…”
「そ、それは…」
戸惑いを見せる彼に対し
「ごめん、ごめん。冗談が過ぎたわね」
と、彼を抱き寄せる牧子だった。
なぜ素直に、牧子の申し出を素直に受け入れなかったのか。
母親のことだけが理由だけではなかった。
「友人との共同生活を始めるから」と告げれば、それ以上の詮索はしない母親の筈だった。
彼に対して盲目的な愛情を捧げる母親が、彼の行動を縛る筈がなかった。
牧子との生活を始めることに何の支障も無い彼だったが、ためらいがあった。
いささか古風な彼にしてみれば、生活の全てを牧子に依存することに、抵抗感があった。
しかしそれとて、幾ばくかの食費を入れれば済むことだ。
漠然とした不安が彼の心の中にあり、打ち消すことができなかった。
牧子が年上だからということではなく、牧子に対する想いが薄らいだからでもない。
それどころか、牧子に対する想いは益々強まっていた。
彼に対する牧子の細やかな心遣いが、彼をして牧子に対する想いを強くさせた。
昨夜の、目くるめく快感は凄まじいものだった。
牧子に、翻弄された彼だった。
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