(三)
「はい、山本さん。お入りください。」
薄暗い部屋の中からお出でお出でと手招きする女医先生、まさしく女神様だ。
眩しかろうと灯りを落としてくださる。ありがたいご配慮だ。
「山本さんは糖尿病のこと、知っていますね。
合併症が恐いですからね。
はいそれでは、眼底検査をさせてもらいますよ。
大丈夫ですよ、なにも怖いことはありませんからね。
光を当てて、中の様子を見させて貰います。
眩しいでしょうけれど、辛抱してください。
まばたきしたくなっても、できるだけ我慢してくださいよ。」
実に優しく猫なで声で囁きかけられると、目の中をのぞき込まれるという恐怖感も薄らいでくる。
“そうだ、糖尿病性網膜症が怖いんだ。
失明してしまうぞ。
少しのことは我慢して、しっかり診て貰わなくちゃ。”
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