(五)
目を伏せて、テーブルの一点を見つめて話す正三に、小夜子から三の矢が射られた。
「男らしくありませんことよ!」
「違います、違います。
本当に正気ではなかったのです。
ですから、ですから……、決して小夜子さんを裏切ってはいません。」
正三の必死の叫び、それは小夜子の許しを請うというよりは、己に対する言い訳だった。
“僕は悪くない、酩酊状態の僕に何ができるというのか。
芸者と情交を交わしたかどうかすら、怪しいものだ。
いや仮にだ、仮にそうだとしても。
傍らにあった物を抱いて寝たというに過ぎない。”
執拗に否定する正三だが、実のところ、少しずつ記憶が蘇ってきている。
あれこれと世話をする芸者に対して、不遜な態度を取り続けたことを思い出している。
連れの二人を残して、芸者に促されるままに席を立った。
「さぁさ、行きましょうね。
ご不浄ですよ、我慢してくださいよ。
漏らしちゃ、だめですよ。」
「頑張れ、佐伯くん。未来の次官さま。
撃沈されぬよう、しっかりと頑張れよ!」
「なにごとも、成せば成る! だ。
佐伯正三くん、突撃だ!」
目を伏せて、テーブルの一点を見つめて話す正三に、小夜子から三の矢が射られた。
「男らしくありませんことよ!」
「違います、違います。
本当に正気ではなかったのです。
ですから、ですから……、決して小夜子さんを裏切ってはいません。」
正三の必死の叫び、それは小夜子の許しを請うというよりは、己に対する言い訳だった。
“僕は悪くない、酩酊状態の僕に何ができるというのか。
芸者と情交を交わしたかどうかすら、怪しいものだ。
いや仮にだ、仮にそうだとしても。
傍らにあった物を抱いて寝たというに過ぎない。”
執拗に否定する正三だが、実のところ、少しずつ記憶が蘇ってきている。
あれこれと世話をする芸者に対して、不遜な態度を取り続けたことを思い出している。
連れの二人を残して、芸者に促されるままに席を立った。
「さぁさ、行きましょうね。
ご不浄ですよ、我慢してくださいよ。
漏らしちゃ、だめですよ。」
「頑張れ、佐伯くん。未来の次官さま。
撃沈されぬよう、しっかりと頑張れよ!」
「なにごとも、成せば成る! だ。
佐伯正三くん、突撃だ!」
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