昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

昭和の恋の物語り (五)

2012-12-01 19:02:29 | 小説
再掲載作品です。
(前タイトル:風よ、伝えて! ~恋のGT~)

昨年(平成23年)、市文芸祭に出品しました。
市長賞(二位)を頂きました。

審査員の方に、
「真理子ちゃんのお話がもう少し欲しかったですね。」
と言われました。

三十枚という制限の中では、どうしても書き切れませんでした。
で今回は、そのことも含めて少し書き足しました。
~~~~~~~~

(五)

「オーイ!そこの二人。
配達だ、早くしろ。」

気まずい空気が流れかけた時、はかったように声がかかった。

「君、Aルートの益田商店に行ってよ。
あそこの娘さん、君の方が良いらしい。
この間届けたら、淋しそうだったよ。」

とんでもないことを言い出した。

「えっ? この俺に。
冗談も休み休みに言えよ。
俺は知らんぞ、そんなこと。」

口をとがらせつつも、内心では嬉しかった。

主任から伝票の束を受け取り、車に向かった。
念のために、ラジエター水の確認。ガソリンもOK。

キーを回しエンジンの機嫌を伺う。
よし良い音! 上々だ。さあ、出発だ。

ギアをローに入れ、勢い良くスタートした。
苦笑いの彼をバックミラーに見ながら、いつも通りセカンドからサードまでグイグイ引っ張った。


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