昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

僕の女王様は妹 (百十八)

2010-12-17 22:15:20 | 小説
ちょっとの間、
沈黙が流れたんです。
何か喋らなくちゃ、
と思うんですけど、
何も浮かばないんです。
心臓がバクバクするだけで。
「悟君に、
お願いがあるんだ。
軽蔑しないでね、
美里のことを。
実はね、
先月素敵な水着を見つけてさ、
買っちゃったの。
カードで買ったんだけど、
今月ピンチなのよね。
でさ、
来月のお給料日に返すから、
貸してくれないかなぁ、
なんて思ったりして。
・・あっ、
良いのよ。
初めてのデートで
こんなこと言い出すのって、
ルール違反だもんね。
ごめんね、
忘れて。」

両手で顔を覆ってるんです、
美里。
なんか、
泣いてるように見えたんです。
「幾らなの?
大して持ってきてないけど、
確か二万円ぐらいは、
財布に入ってると思うけど。
それで足りる?
足りないようなら、
明日にでも銀行から下ろしてくるけど。」
シートベルトを外して、
斜め前に体を動かしたんです。
左の後ろポケットに財布が入ってるんで。
そうしたら、
美里が、
僕に抱きついてきたんです。
「ありがとう、
ありがとう。
ずっと悩んでたの。
サラ金から借金するの、
恐かったの。
でも、
最後はそうしなくちゃ、
って思ってたの。」
やっぱり、
泣いてました。
僕の頬っぺたに、
美里の涙がくっつきましたから。


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