昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (三十七)

2010-12-18 13:59:23 | 小説
突如、
何の前ぶれもなく
ー陽射しの強い日曜日の夕方に、
私の恋人だと
青年を連れてきました。
肝をつぶす、
というのは
こういうことを
指すのでございましょう。
唯々
驚くばかりでございます。
妻などはもう、
小躍りせんばかりに
喜ぶ仕末でございます。
わ、
私でございますか?
・・そりゃあもう、
嬉しくもあり
哀しくもあり、
世のお父様方と
同じでございますよ。
えぇ、
本当にそうでございますとも。

青年は
二時間程雑談を交わした後、
帰って行きました。
穀物を扱う商事会社に勤めるお方で、
年は二十六歳の
一人暮らしとのことでございました。
両親は、
九州にご健在で
弟一人・妹二人の
六人家族ということでございました。
その後娘は、
しきりに青年の印象を聞くのでございます。
妻が、
いくら
「いい人じゃないの」
と言ってみたところで、
私が一言も話さないものですから、
娘も落ち着きません。

お茶をすすりながら、
ポツリと
私は言いました。
「いい青年だね。
だけどお前、
やっていけるのかい?
ゆくゆくは、
ご両親との同居もあるよ。」
娘は、
目を輝かせて
「勿論よ、
お父さん!」
と答えるのでございました。


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