昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十一) あたしなんかどうせ

2014-03-02 12:10:39 | 小説
(五)

「誇りよ、自尊心よ。そうね、自分を信じる思いでもあるわね。
よくいるでしょ、『あたしなんかどうせ』って愚痴をこぼす女が。

自分で自分を卑下してどうするの!そう言いたいわ。
『貧乏人だから、片親だから、学校を出ていないから…』

色々言い訳をするけれど、そんなの自分を信じていないからよ。
『おかめみたいなあたしなんか』

ですって? 冗談じゃないわ! 女を顔で評価する男って、最低よ。
それを受け入れる女もまた最低よ! 男に媚びてどうするの。

しっかりしなさい! って言いたいわ。」

舌鋒鋭く語る小夜子に、勝子もたじろいでしまう。これ程に激しい小夜子を、勝子は知らない。
毅然とした立ち居振舞いをする小夜子ではあるが、今日の今の小夜子は激しすぎる。

「怒ってるの? 小夜子さん。だったら謝るわ、あたし。
ごめんなさいね、馴れ馴れしくし過ぎたみたいね。
分もわきまえないで、ほんとにごめんなさい」

肩をすぼめて小さくなる勝子。慌てて小夜子が言った。

「違うの、勝子さんに怒ってるんじゃないの。
勝子さんをジロジロ見てるあの女性たちに、腹が立ってるのよ。

新しいものに対していつも反発するあの女性たちに。
そのくせ誰か有名人が認めると、手の平を返すように賞賛して。

昨日まで敵対していた人に対して、今日は大拍手みたいな。
あたしもね、初めの頃は同じだったの。ジロジロ見られて、眉をひそめられて。

でも、あたしは負けなかった。キッと睨みつけてやったわ。
『文句あるの!』って、心の中で叫んだりして」


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