(二十三)
俺は咳払いをした後、声を整えてからぞんざいに答えた。
「お姉さまには聞いてません。そちらのお嬢様にお聞きしたのですが。」
「アラ、失礼しました。
どうせ私は、お刺身のつまでございます。
お邪魔虫でございますわ。」
と、軽く受け流してくれた。
車中に笑い声が起こり、俺は事務員さんに感謝した。
これからは感謝の意味も込めて、さん付けにしよう。
「真理子お嬢様、そこでよろしいですか?」
今度は無事に聞けた。
「はい。まだ行ったことがないですから。」
と、相変わらずの蚊の鳴くような声で答えてくれた。
身震いするような、可愛い声だ。くぅー!
「OK!」と答えるや否や、町の外れにある、
さほど高くはない山に作られたドライブウェイに向かって車を走らせた。
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