昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(四十ニ)の五と六

2012-08-11 18:03:41 | 小説

(五)

「私らみたいな無粋人には縁のない世界の大スターらしいですわ。

会社の娘っ子も、大騒動ですわ。
泣き出す子もいる始末でして。
参りました、まったく。

しかしなんでまた、そんな大スターさんを調べろなんて。」

「いや、小夜子がな……」

「まさか! それがショックで、ですか? そんな大仰な。」

明らかに憤懣やる方ないといった五平だ。

「違うんだよ、五平。
単なるファンじゃないらしい。

何でもな、その大スターさんと義兄弟、じゃなくて義姉妹って言うのか? 
家族になる約束をしてたらしいんだ。」

「ちょっと待ってくださいよ。」

「待て待て、五平。
相手がどこまで本気だったかは、分からん。

しかし小夜子は信じ込んでたみたいだ。
だからこその、ショックの大きさだ。

分かってやってくれよ。」

再度の連絡が入ったのは、もう夜も更けた頃だった。

「えらいことです、武さん。
小夜子さんの話は、ほんとのことでした。

トーマスに頼んだところ、詳しい事情が分かりました。」




(六)

「なんだ、ほんとのこととは。
なにを、興奮してるんだ。」

五平が武蔵を武さんと呼ぶのは、余程に慌ててる時だ。

「どうやら昨年あたりなんですがね、娘っ子が体調を崩していたらしいですわ。

そこで小夜子さんに出会って、惚れると言ったら変ですが、ご執心となったらしいです。」

「なんで分かるんだ、そんなことが。」

小夜子を奪おうとするアナスターシアに、猛烈な嫉妬心を感じる武蔵だ。

「えっと、何て言ったか……。
そう、マッケンジーですわ、服飾デザイナーの。

この男がゲロしたらしいですわ。」

得意げな話し方をする五平に対しても、怒りがこみ上げてくる。

「あぁ、もういい! 
電話じゃ、だめだ。

来い、すぐに来い!」
と、思わず怒鳴りつけてしまった。

「どうしたの? 何か、あったの。」


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