昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一章~(一) デパートでの訓辞

2014-08-27 08:39:09 | 小説
(五)

デパートでの訓辞
「商品を第一に考えること。」
を忠実に守ったのだ。
「車の水しぶきに対しては、自分は濡れても商品は濡らすな」
という訓辞を咄嗟に思い出したのだ。

幸いにも、近くにいた令嬢の一声で、犬は彼に対しての攻撃を止めた。
「ジョン、ストップ!」
見事に訓練されている犬であったことが、彼をして救ったのである。

顔面蒼白の彼を見た令嬢は、大きな声で笑いながら
「おかしな人ね、荷物で撃退すればいいのに」と、彼に声をかけた。

彼は、
「そうですね、すみません。」
と、つい謝ってしまった。

「あらっ、謝るのはこちらね。ごめんなさい、鎖を外してて」
そんなことから、彼はその令嬢と親しく会話をするようになった。

その令嬢は、通産省の役人を父に持ち、有名女子大学に在学の身だった。
女王然としたその態度は、彼をして萎縮させるに十分だった。
今更ながら、茂作に対する反発心から現在の二流大学に在籍してしまった己を悔いた。

しかしそのことが令嬢の気を惹いたらしく、初詣でへの誘いを受けた。
勿論彼としては、喜々としてその申し出を受け入れた。

「そんなに気難しい方なの? でも、自立するための大学だなんて、思い切ったことをなさるのね」

「正直、今、少し後悔してます。
でも、だからこそ、麗子さんにお会いできたから、、
あっすみません。失礼なことを言ったみたいで、、」


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