[わがまま]
なんてつらい日だ。仕事、そんなもん、なんだよ! どうして仕事をする?
生活のかてのためだったら、べつに定職をもたなくてもいい。
アルバイトでもいいじゃないか。
”デカンショ、デカンショで、半年暮らす。あとの半年は、寝て暮らす”
大体、チコがいけないんだ。
せっかくのイブだというのに、仕事をするなんて。
しかも他県だなんて。
それに最近は、ナイトクラブでの仕事を増やしたりして。
酔っぱらい相手に、歌をうたっても仕方ないじゃないか。
からまれたりもして……。
いや、わかってる。
ぼくのわがままなんだ、チコには言えないことだ。
きみだからこそだ。
[休みの日]
チコの休みは、平日ばかり。
ぼくの休みは、日曜日。
わかってはいた、時間が合わないことは。
それを承知のことだったはずだ。
いっそのこと、会社を辞めようか。チコに合わせようか……。
このあいだ、ホンのわずかな時間をともに過ごしはした。
けれど、時間ばかりを気にしているチコは、きらいだ。
「お正月はゆっくり会えるわよ」そう言うチコ。
だけど、ぼくは正月にはこの町にはいないんだ。
故郷に帰ってしまう。
毎年、晦日におふくろがむかえにくる。
といって、故郷に来てくれるはずもないチコ。
ぼくだって、邪魔されたくない。
そしてぼくがこの町にかえってくるころには、チコはもう居ない。
……どうしたものか。
そう言ったら、チコはこまり顔をしくれるかい?
それとも、ニッコリ笑って
「いいわよ、甘えてらっしゃい」と、言うかい?
けっきょく、フキゲンな顔ばかりを見せてしまった。
きっと、嫌われただろう。
わずかの時間をさいてくれたチコ。
ごめんね、チコ。
すぐに、手紙を出すよ、「ごめんなさい」と。
あと、五日で仕事も終わり。
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