昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(三十五)の三と四

2012-04-22 12:30:01 | 小説


「いや、そんなに早くは無理だ。
二三ヶ月は先だろうさ。
先月、慰問団が来たからな。
そう、しょげ返るな。
日本人のバンドが、週末毎に演奏してるんだ。
アメリカの将兵さん相手にな。
そこに潜り込ませてやるよ。」

「一緒に、来てくれないの? 
一人じゃ、怖いわ。」
「俺は、ちょっとな…。
代わりに、誰か付けてやるよ。
そうだ! 小夜子。 
い内に、会社に来い。
みんなに会わせておこう。
顔つなぎをしておくのも、いいだろう。」

「でも、あたし…。
アーシアの都合次第では、来年にでも…」
「その時はその時だ。
その前に、小夜子。
会話の方は大丈夫か?」

「うーん、多分ね。
学校では何とか話してるけど、どうなんだろ、実際は。」
「よし、分かった。
じゃ、試験を受けてみるか?」

「試験?」
「あぁ、アメリカさんのパーティに連れてってやる。
そこで分かるだろう。
小夜子の英語がどの程度通じるか。」

「うわぁ、なんだか怖いわ。
でも、行ってみたい。」

「どうだ? 俺の嫁さんになると、こんなに良いことがいっぱいだぞ。
その、えーと、アーシアというモデルより良いだろうが。」

「ダメエ! アーシアって呼んで良いのは、あたしだけなの。
日本では、ね。
世界でも、数人しかいないのよ。」

「そうか、そいつは悪かった。」
「良いわ、許してあげる。
知らなかったんだから。
でね、アーシアってね…」
目を輝かせて、アーシアとの交流を話しだした。





しかし武蔵には、まるで話が見えない。
“アーシアとか言うモデルと暮らす。
それは分かったとしょう。

それじゃ正三は、なんなんだ? 
なんで結婚なんだ? 
正三は承諾してるのか? 

まさか付いて行くわけでもあるまいし。
それとも小夜子の勝手な思い込みか?”

どう考えても理屈が付かない、正三の気持ちが理解できない。
“正三くんは了解してるのか?”

口に出して聞いてみたいと思うが、止めた。
不機嫌になることは、目に見えている。

「あぁ、美味しかった。
さてと、最後のお菓子は、…やっぱり冷たくて甘いものよね。
あれ、何て名前だったっけ?」

「アイスクリームのことか?」
「そうそう、それそれ。
頼んでくれる?」

武蔵が手を挙げると、ウエイターがすぐさま飛んできた。
「こちらのお姫さまが、アイスクリームをご所望だ。
頼むよ。」

「承知いたしました。」
深々と礼をして下がる。


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