昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(二十八)の七と八

2012-02-04 17:31:49 | 小説


女給たちの羨望の眼差しを受けながら、小夜子は嬉々としてそれを受け取った。
「嬉しいぃ!でも、これと愛人とは別物よ。
どうせ愛人になった途端に、何もくれなくなるんでしょ!
その手には、乗りませんよーだ。でも、ありがとう!」
武蔵に抱きつきながら、小夜子も又戯れ言で返した。

当初こそ遠慮がちな態度を取り続けた小夜子だったが、今ではあからさまに
「あのバッグが欲しいわ。それと、あの靴も。
この間買って貰ったお洋服には、絶対に必要なの!」と、要求するようになっていた。
そのあまりの事に、梅子が苦言を呈したこともあった。
「小夜子ちゃん。
あなた、分かってるの?どれ程散財させているか。
世の中、そんなに甘いものじゃないわよ。」

「大丈夫ですって、梅子さん。
社長さん、凄く喜んでくれるんです。
おねだりをしないと、却って叱られるんですから。」と、まるで意に介さなかった。

「小夜子ちゃん!気を付けなさいよ。
社長の常套手段よ、それって。
どれだけの女が、それで騙されたことか・・。
だめよ、愛人になっちゃ。」
冗談とも本音とも取れぬ言葉を、珠子が告げた。


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