昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (十二)

2010-11-10 21:19:19 | 小説
娘が十六の時でございました。
酒の酔いも手伝って、
妻に手をあげてしまいました。
些細なことからの
口喧嘩の末のことでございました。

生まれてこの方、
そのような経験の無い妻にとっては、
ショックでございましたでしょう。
眼をカッと見開いて、
口をパクパクさせ・・
*眼=まなこ

クク、
まるで陸に上がった魚でございました。
思わず、
噴出してしまいました。
と、
怒ること怒ること。
*陸=おか

怒髪天を突く、
勢いでございました。
“俺を虚仮にして!
あの男の娘なんだろうが!”
心の内で、
叫んでおりました。


えっ、
「どうして実の娘ではないと分かったのか?」ですと。
お話ししていませんでしたか、
失礼いたしました。
親の口から申すのも何でございますが、
実に頭のいい子でして、
常に学年トップの成績でございました。

器量も、
私に似ず評判の娘でございます。
お分かりでしょうか?
私とは
似ても似つかぬ
娘なのでございます。

まぁ確かに、
妻に似てはおります。
大きな目と
鼻筋が通った鼻、
そしてぷっくりとした少し肉厚の唇。
顔の輪郭は、
まぁ面長の部類に入りますでしょうな。

うーん、
お分かりいただけませんか?
困りましたなぁ、
どうご説明すればいいか・・。
映画スターで言えば・・
うん!
松坂慶子に似ておりますですよ。
「夜の診察室」なんぞは、
初々しい色気があります。

ハハハ、
羨ましいですかな?
ただ、
お店の近くに住んでおられた大木様のお話では、
あの同棲相手の男の面影があるとのこと。
*お店=おたな

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