昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

大長編恋愛小説 【ふたまわり:第二部】(二)の8

2011-03-05 16:59:47 | 小説
設立から一年が経った今も、
一つの儀式が続けられている。
社員たちを集めた武蔵は、
毎月末になると、
机の上にうず高く札束を積み上げてみせた。

そして、
仕入れ用の金員を
金庫に仕舞い込む。
残った札束を、
それぞれに振り分けた。

「みんな、
良く頑張った。
今月は、
いつにも増して儲かったぞ。
それぞれ壱千円の大台に乗ったな、
ご苦労さんだった。
聡子!
お前は、
今月減給だ。
計算間違いを幾度となく、
やった。
三割減給する。
その分を、
山田・服部・竹田の三人に渡せ。
いいな!」

有無を言わせぬ武蔵の言葉に、
聡子は唯小さく頷くしかなかった。
「いいか!
お前たちも、
気を抜くなよ。
ミスをしたら、
減給だ。
勿論、
俺にしろ加藤専務にしろ、
同じだ。
いや、
俺達の場合は五割の減給だ。
大きいからな、
損失が。」

「分かっております、
社長。」
と、御幣が答える。
しかしそんな武蔵の言葉も、
彼ら三人の耳には届いていなかった。
目の前に積み上げられた札束に、
目を奪われていた。


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