昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (八) 第一印象

2015-01-04 10:25:50 | 小説
振り向いた瞬間に、彼は体に電気が走ったような感覚に囚われた。
“何て素敵な女性だろう”
それが、のぶこに対する第一印象だった。

メガネをかけた女性が初めてだったこともあるが、知的な雰囲気を漂わせていた。
のぶこは、背筋をピンと伸ばし真っ直ぐに彼を見据えた。

「君、新入学生だね。サークルは、ダンスにしなさい。姿勢が良くなるわよ。
それに何と言っても、社会に出て役に立つわ。さっ、いらっしゃい」
と、半ば強引に彼を勧誘した。

のぶこの言に引き込まれるように、彼は後に従った。
部室に入って驚かされたのは、部員の殆どが女性だということだった。
二十名近くの中で、男はわずかに三人だけだった。

「おゝ! さすがに、のぶこ女史だ。よくぞ男性を掴まえてくれました」
皆が、口々に囃し立てた。
そして彼が部屋に入るなり、すぐさま扉が閉じられた。

「ようこそ!女の園へ。ようこそ! ダンス部へ。大歓迎よ」
と、女性達が群がった。

ムッとくるような香水の香りが、彼の鼻についた。
種々雑多な香りが混ざり合い、不快感が感じられる程だった。
週一回のレッスンだと聞かされたが、結局のところ名前だけの部員になってしまった。

二月ほど後に、構内でのぶこに出くわした彼は、強引に引っ張られた。
のぶことの道行きよろしく手を引かれて行く彼だったが、ウキウキした気分でいた。
“のぶこさんの相手ならば”と、期待に胸を膨らませる彼だった。

しかし部室に入るや否や、のぶこは
「じゃあ、後はよろしく」
と、きびすを返して出ていってしまった。
唖然とする彼に対し、
「あははは。だめよ、のぶこ女史は。彼女は、ファザコンなの。うんと年上の男性専門よ」
と、リーダーである女性が、彼に告げた。

*出雲大社参詣記を、[toshichanの旅日記]にアップしました。


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