その女子は真面目派より一学年下だったが、幸か不幸かふたりと同じバレーボール部だ。
ゆえに、放課後にふたりに帯同すれば、ひんぱんに会える。
行動派が部活動に熱心なこともあり、ヒネクレ派も必然とがんばっている。
そんなふたりを待つという口実のもとに居残りをきめこんでいた。
三年ほど前の夏季大会ののちに、理由は分からないが部員ゼロとなってしまった。
そして今年までの三年間、廃部となっていた。
そんな男子バレーボール部を、行動派が復活させたのだ。
気乗りのしないヒネクレ派をムリヤり入部させ、ほかに数人の幽霊部員を仕立て上げた。
大会ごとに集合して、試合前のわずかな時間だけ練習をする。
そして作戦も何もなく、むろんコーチもいない。
どころか、役割すらあいまいだ。
皆がみなアタッカーであり、やむなくレシーバーやらセッターにもなる。
正直、勝てるはずがない。
もちろん、真面目派も部員ということになっている。
ただまるで運動音痴の彼が、練習にはいることはない。
雑務のマネージャー的仕事をしているだけだ。
タオル渡し、飲料水管理だ。
そうそう、審判へのタイム宣告だけは、顧問の教師、行動派の指示のものとにおこなっている。
練習に参加する者はたいてい3・4人ほどで、
対外試合直前に10人ほどが参加してくる。
顧問の教師もいるにはいるが、経験のない名前だけのものだった。
ゆえに、女子部員とともにの練習の日々である。
といっても、女子部員たちの休憩時間中だけだが。
なにせ女子は県大会の常連だ、この学校では運動部で、一、二を争う勢いのあるチームだから。
わたしにたいする、ヒネクレ派の冗談混じりの
“体力づくりにでも参加しろよ”という、誘いにすぐに乗ったのは、その女子生徒が部員だったせいだった。
ひょっとするとヒネクレ派は、そんな真面目派の思いに気づいていたのかもしれない。
もっとも、話をする機会もなく、話しかけることもできずにはいた。
それでも、真面目派の男にとっては、同じくうきを吸っているだけで幸せな気分にひたっていた。
ヒネクレ派の話から聞こえてくるその女子生徒は、タイプとして内向的な男はキライだという。
それが少なからず、真面目派の男にショックを与えた。
そのことからの、発奮であった。
”十七歳を境とし、過去と決別する!”
そんな決意は、だれも知らない。もちろん、ふたりも。
しかし、その兆候は見えはじめた。
体力づくりと称してのランニングだけとはいえ、部活動への参加。
そして自習時間中の発言。この男にとっては、並々ならぬ精進である。
肉体的苦痛はさほどでもないが、精神的苦痛ははげしい。
ときとして、喉がヒリヒリとするほどに緊張している。
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