(六)
目を輝かせて、私の手を引っ張る。
人一倍怖がりのくせに、入りたがる彼女だった。
今では見世物小屋ではなくお化け屋敷が、お祭りにとってなくてはならぬものになってしまったようだ。
あぁそう言えばと、中学時代の友人を思い出した。
人一倍正義感に溢れた男で、人情味にも溢れていた。
三年に進級してすぐのことだった。
ちょっとした事件を、友人が引き起こした。
後ろの黒板の端っこに、突然五線譜を引いた。
そして「クラスの歌」というタイトルのメロディを書き始めた。
ざわつく声に答えることなく、一気に書き上げた。
「みんな。これに、歌詞を付けてよ。
みんなで歌おうよ。
それで、卒業後も同窓会の時なんかにさ、校歌と一緒に…」
「なんだよ、それ。
許可、貰ってんのかよ。」
友人の声を遮って、Sが咎めた。
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