(五)
一人取り残された私は、人ごみをかき分けてまで追いかける気にならずに、傍らの玉垣に腰をかけた。
「あぁ、悪いんだ。罰が当たるよ!」
りんご飴を、さも愛おしそうに舐めながら、彼女が戻ってきた。
「ねえ。あっちにね、お化け屋敷があるの。
入ってみない?」
「あぁ? お化け屋敷って、またか?
この間入ったばかりじゃないか。
それでもってぼくにしがみついて、一歩も動けなかったろうが。
それなのに、またか?」
「意地悪! でもまた、入りたいんだもん。
この間のは、西洋のお化けだったでしょ?
ここのは、日本のお化けみたいなの。
日本のお化けは知ってるからさ、そんなに怖くないんじゃない?
ねえ、行こうよ。
あ、そうそう。さっき新一が言ってた呼び声って、お化け屋敷じゃなかったの?
頭の少し禿げ上がったおじさんが、一生懸命大きな声を張り上げてたわよ。」
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