ある冬の街角で……、そう、少し雪の散らつく寒い夜のこと。
ダウンジャケットのポケットに迄、冷たさが忍び込んできた。
路面がうっすらと雪の化粧をし、街灯の灯りで眩しい。
ひっそりとして、明かりの消えたビルの前を、ポケットの中の小銭をちゃらつかせながら歩いていた。
とその時、後ろから恐ろしく気味の悪いーかすれた、腹からしぼり出すような声がする。
”だめだ! 左はだめだ。右に、行くんだ!”
どぎまぎしながらも後ろを振り向いた。
全身が血だらけで、片腕のちぎれかけた男が、呼び止める。
生々しいタイヤの跡が、顔面に刻み込まれている。
その男、確かにどこかで見たような気がする。
が、あまりの形相に思わず目をそむけた。
そのまま逃げ出し、左へ折れた。
そう。
男の言う、行ってはならない左へ行った。
と、ふと思い出す。
血だらけの男の居た場所は、雪が白かった。
曲がりきって、あの男から逃げおおせたと気を許した瞬間、雪化粧の路面で足を滑らせ、道路の中央に転んだ。
その時、チェーン無しの車のすべる音。
その音を耳にした時、俺の目の上をタイヤが滑っていく。
何だ、これは!
一体、どうしたことだ。目の上にタイヤが……
”ウワァオ!”
「だめだ! 左はだめだ。右に、行くんだ!」
精一杯、腹からしぼり出すように、俺は叫んだ。
(背景と解説)
散文詩だと解釈してください。
私の中では、「超・極・短編」小説と言いたいのですが、言えませんでした。
ショート・ショートストーリーと称すべきでしょうか。
これが、あの名作(冗談ですよ、笑えないjokeですから)
習作的なものですが、[あぶらかだぶら! ~白ではなく、赤い…~]になりました。
このブログでは掲載していませんでしたかね?
これは実体験なのです、といっても目撃したということなのですが。
もう半世紀近く前のことですが、歩道に乗り上げた車が女性を轢いちゃったんです。
ただ、不思議なことに、その女性はその後ムクリと起き上がられたんですよ。
もう、ビックリ仰天ですわ。
反対側を歩いていたわたしですが、はっきり見えました。
大雪だったことが幸いしたのでしょうか。
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