(十五)
ともあれその夜、友人宅に泊まるからと自宅に連絡を入れた。
そして午前一時の柱時計の報を聞くと、眠い目をこすりながら行動に移した。
家人に気づかれぬようにそっと出ると、目指すはあの小屋である。
歩いて四、五分の神社なのだが、できるだけ暗い道をと回り道をしながら歩いた。
酔っぱらいの声に怯え、巡回の警察官に出くわしはしないかと、また怯えた。
犬に吠えられた折には、二人とも一目散に駆け出していた。
そしてようやく、小屋に辿り着いた。
恐らくは十分か二十分の道程であったろうが、二人には一時間にも二時間にも感じられるものだった。
「着いたぞ。」
「着いたね。」
「あの人は、どこだ? どこで寝てるんだ。」
「どこだろうね、ほんとに。」
小屋の周りを音を立てぬようにと歩きながら、小声で声を掛け合った。
怖かったのだ。
街灯は遠くにある。
ここまでその灯りは届いてはくれない。
境内に張り巡らされていた電灯は、すべて消えている。
月明かりだけが頼りだった。
けれどもその月にしても、時折雲間に隠れてしまう。
ややもすればくじけそうになる、心の移ろいそのものの月だった。
ともあれその夜、友人宅に泊まるからと自宅に連絡を入れた。
そして午前一時の柱時計の報を聞くと、眠い目をこすりながら行動に移した。
家人に気づかれぬようにそっと出ると、目指すはあの小屋である。
歩いて四、五分の神社なのだが、できるだけ暗い道をと回り道をしながら歩いた。
酔っぱらいの声に怯え、巡回の警察官に出くわしはしないかと、また怯えた。
犬に吠えられた折には、二人とも一目散に駆け出していた。
そしてようやく、小屋に辿り着いた。
恐らくは十分か二十分の道程であったろうが、二人には一時間にも二時間にも感じられるものだった。
「着いたぞ。」
「着いたね。」
「あの人は、どこだ? どこで寝てるんだ。」
「どこだろうね、ほんとに。」
小屋の周りを音を立てぬようにと歩きながら、小声で声を掛け合った。
怖かったのだ。
街灯は遠くにある。
ここまでその灯りは届いてはくれない。
境内に張り巡らされていた電灯は、すべて消えている。
月明かりだけが頼りだった。
けれどもその月にしても、時折雲間に隠れてしまう。
ややもすればくじけそうになる、心の移ろいそのものの月だった。
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