昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

鼠小僧次郎吉 ~さると猿回し~ 三十一

2010-09-19 12:19:55 | 小説
叫びたくなる衝動にかられたことも、
一度や二度ではない。
そしてそんな毎日を送り過ごす内に、
当然ながら金の出入りも激しく、
瞬く間に持ち金がなくなってしまった。
それらの不安や苛立ちを紛らわす為、
結局盗みを続けていった。
しかしそれまでの、
痕跡を極力残さない次郎吉に、
変化が現れた。
数々の悪戯を残すようになった。

松平周防守邸では、
一年の内の三月・五月と立て続けに二度押し入った。
そして、
長局の障子紙に、
のぞき見の穴を開けてまわった。
また、
他の大名屋敷ではそれぞれの名器らしき陶器を、
片っ端から壊して回った。
食事時に使う箸・金箔の盃やらを、
箱の中から取り出して、
部屋の中にズラリと並べた。 

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