カレーライスをパクつきながら、会話が弾んだ。
女子校に通っていた貴子のドジさ加減は、笑いが絶えなかった。
「でね、親友宛のデートの誘いを自分だなんて勘違いして、待ち合わせの場所に行ったの。
キョトンとしてるの、相手が。
そりゃそうよね、言付け(ことづけ)を頼んだ相手が来るんだもん。
“振られた”って、思ったらしいの。
ところが、親友もその相手のことは好きだったのよ。
もう、凄く恨まれちゃって。大変だったわ」
身振り手振りの貴子の話は、途切れることなく続いた。
彼が口を挟む余裕すら与えない程、一人しゃべりの状態だった。
貴子にしてみれば、会話が途切れることが不安だった。
沈黙が訪れることで、彼を拒否してしまった折りの気まずい空気が、また流れるのではないかと不安だった。
もっとも、生来お喋り好きな貴子には苦痛なことではなかった。
聞き役に徹している彼が、貴子の話に笑い転げていることが嬉しくもあった。
野菜サラダを食べたがらない彼をたしなめた折り、
「お母さんみたいなことを、言って!」
と口を尖らせたのが、彼の唯一の言葉だった。
食事が済んで、貴子は後片づけに入った。
「手伝おうか」と言う彼を制して、貴子は彼をその場に留まらせた。
貴子は、彼が傍に近づくのを避けていた。
泣き出しそうになるような気がしていたのだ。
彼の思いに応えられない自分が、情けなかった。
貴子自身も彼に抱かれたいと思っている。
しかし、また体が拒否反応を起こすのでないか、そう思えて不安だった。
“今度拒否してしまったら、きっと嫌われてしまう”
そう思うと、どうしても少し距離を置いていたかったのだ。
そんな貴子の揺れる気持ちに、まるで気付かぬ彼は「満腹、満腹!」と、お腹をさすったりしていた。
「よく食べたわねえ、驚きよ! 五人分位作ってきた筈なのに。明日の夜にも、と思ってさ」
洗い物を終えた貴子は、エプロンを外しながら振り向いた。
いつの間にか貴子の後ろに立っていた彼の腕に、スッポリと収まった。
女子校に通っていた貴子のドジさ加減は、笑いが絶えなかった。
「でね、親友宛のデートの誘いを自分だなんて勘違いして、待ち合わせの場所に行ったの。
キョトンとしてるの、相手が。
そりゃそうよね、言付け(ことづけ)を頼んだ相手が来るんだもん。
“振られた”って、思ったらしいの。
ところが、親友もその相手のことは好きだったのよ。
もう、凄く恨まれちゃって。大変だったわ」
身振り手振りの貴子の話は、途切れることなく続いた。
彼が口を挟む余裕すら与えない程、一人しゃべりの状態だった。
貴子にしてみれば、会話が途切れることが不安だった。
沈黙が訪れることで、彼を拒否してしまった折りの気まずい空気が、また流れるのではないかと不安だった。
もっとも、生来お喋り好きな貴子には苦痛なことではなかった。
聞き役に徹している彼が、貴子の話に笑い転げていることが嬉しくもあった。
野菜サラダを食べたがらない彼をたしなめた折り、
「お母さんみたいなことを、言って!」
と口を尖らせたのが、彼の唯一の言葉だった。
食事が済んで、貴子は後片づけに入った。
「手伝おうか」と言う彼を制して、貴子は彼をその場に留まらせた。
貴子は、彼が傍に近づくのを避けていた。
泣き出しそうになるような気がしていたのだ。
彼の思いに応えられない自分が、情けなかった。
貴子自身も彼に抱かれたいと思っている。
しかし、また体が拒否反応を起こすのでないか、そう思えて不安だった。
“今度拒否してしまったら、きっと嫌われてしまう”
そう思うと、どうしても少し距離を置いていたかったのだ。
そんな貴子の揺れる気持ちに、まるで気付かぬ彼は「満腹、満腹!」と、お腹をさすったりしていた。
「よく食べたわねえ、驚きよ! 五人分位作ってきた筈なのに。明日の夜にも、と思ってさ」
洗い物を終えた貴子は、エプロンを外しながら振り向いた。
いつの間にか貴子の後ろに立っていた彼の腕に、スッポリと収まった。
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