(六)
千勢の悲痛な声が飛ぶと同時に
「社長は大丈夫です。飲みすぎられただけですから」
と、竹田が声をかぶせた。
「いや、すまん。飲みすぎたみたいだ。
今夜は、竹田ら若手と飲んだんだ。
将来の幹部社員たちの、今の気持ちを聞いておこうと思ってな。
そろそろ跡継ぎも欲しいし、こいつら若手に盛り立ててもらわなくちゃいかんしな。
万が一跡継ぎに恵まれなかったら、誰かに跡を継がせなきゃいかなくなるしな。だから…」
「ご苦労さま、竹田。もう帰っていいわ」
と、相変わらずの突っ慳貪な口調で言った。
「はい。それでは、おやすみなさい」
と、竹田。その竹田を、通りまで千勢が見送った。いつもの光景だった。
ソファに武蔵を座らせ、床に正座をする小夜子。
異様な雰囲気に気付いた武蔵も、慌てて床に正座した。
「いや、悪かった。こんなに飲むつもりはなかったんだ。
なかったんだが、あいつらがあんまり嬉しいことを言ってくれるものだから、ついつい。
すまん、二晩続けてはまずい。しかも、小夜子の体調が悪かったのにな」
頭を床にこすり付けんばかりにする武蔵。機先を制したつもりだった。
「あなた、跡継ぎが欲しいのよね」
思いもかけぬ小夜子の言葉に、怪訝な顔付きで
「あぁ、欲しい。欲しいけれども、俺の気持ちだけでは…」
「できました、赤ちゃん。今日、病院で確かめてきました」
千勢の悲痛な声が飛ぶと同時に
「社長は大丈夫です。飲みすぎられただけですから」
と、竹田が声をかぶせた。
「いや、すまん。飲みすぎたみたいだ。
今夜は、竹田ら若手と飲んだんだ。
将来の幹部社員たちの、今の気持ちを聞いておこうと思ってな。
そろそろ跡継ぎも欲しいし、こいつら若手に盛り立ててもらわなくちゃいかんしな。
万が一跡継ぎに恵まれなかったら、誰かに跡を継がせなきゃいかなくなるしな。だから…」
「ご苦労さま、竹田。もう帰っていいわ」
と、相変わらずの突っ慳貪な口調で言った。
「はい。それでは、おやすみなさい」
と、竹田。その竹田を、通りまで千勢が見送った。いつもの光景だった。
ソファに武蔵を座らせ、床に正座をする小夜子。
異様な雰囲気に気付いた武蔵も、慌てて床に正座した。
「いや、悪かった。こんなに飲むつもりはなかったんだ。
なかったんだが、あいつらがあんまり嬉しいことを言ってくれるものだから、ついつい。
すまん、二晩続けてはまずい。しかも、小夜子の体調が悪かったのにな」
頭を床にこすり付けんばかりにする武蔵。機先を制したつもりだった。
「あなた、跡継ぎが欲しいのよね」
思いもかけぬ小夜子の言葉に、怪訝な顔付きで
「あぁ、欲しい。欲しいけれども、俺の気持ちだけでは…」
「できました、赤ちゃん。今日、病院で確かめてきました」
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