疲れている麗子ではあった。婚約者の独善性に振り回される日々に、疲れている麗子だった。
「黙ってついてくれば、いいんだ!」
少しでも異論を唱えると、叱責された。
思えば、そんな不満のはけ口を彼に求めていた麗子だった。
従順な彼を、麗子に憧憬の念を抱く彼を振り回すことにより、心のバランスを保っていた麗子だった。
そんな彼との付き合いを止めてからの十ヶ月というもの、耐えに耐えた麗子だった。
デパートでのバイトを始めるきっかけも、結婚前に実社会の空気に触れたいという大義名分を作りはしたが、
実のところは、その後の彼を知りたいという思いからだった。
今にして、彼との付き合いを禁じられた後に、どれ程に彼に癒されていたかを思い知らされた麗子だった。
「外は、涼しい風で良い気持ち。起きてらっしゃるかしら。
そう思って、何度も車に戻ったのよ。
でも、武士さんの寝顔って、ホント可愛いわ」
彼はそんな麗子が眩しく、気恥ずかしさも手伝い、黙々と食べ続けた。
「あら? このお紅茶、おいしいわ。少し飲んでごらんなさいな」
麗子の差し出す缶を、彼は軽く頷きながら受け取った。
麗子の口が付けられた缶を、ドギマギしながら受け取った。
「どう? 美味しいでしょ。全部は、だめよ。私、未だ飲み足りないの」
慌てて飲み口を拭こうとする彼に、麗子は彼の手をそっと包み込むようにして、体を折り曲げてきた。
麗子の艶やかな髪が、ほのかに薫るフローラル系の香りが、彼の鼻腔ををくすぐる。
「うん。やっぱり、美味しい。どうなさったの? 震えてらっしゃるの?」
「黙ってついてくれば、いいんだ!」
少しでも異論を唱えると、叱責された。
思えば、そんな不満のはけ口を彼に求めていた麗子だった。
従順な彼を、麗子に憧憬の念を抱く彼を振り回すことにより、心のバランスを保っていた麗子だった。
そんな彼との付き合いを止めてからの十ヶ月というもの、耐えに耐えた麗子だった。
デパートでのバイトを始めるきっかけも、結婚前に実社会の空気に触れたいという大義名分を作りはしたが、
実のところは、その後の彼を知りたいという思いからだった。
今にして、彼との付き合いを禁じられた後に、どれ程に彼に癒されていたかを思い知らされた麗子だった。
「外は、涼しい風で良い気持ち。起きてらっしゃるかしら。
そう思って、何度も車に戻ったのよ。
でも、武士さんの寝顔って、ホント可愛いわ」
彼はそんな麗子が眩しく、気恥ずかしさも手伝い、黙々と食べ続けた。
「あら? このお紅茶、おいしいわ。少し飲んでごらんなさいな」
麗子の差し出す缶を、彼は軽く頷きながら受け取った。
麗子の口が付けられた缶を、ドギマギしながら受け取った。
「どう? 美味しいでしょ。全部は、だめよ。私、未だ飲み足りないの」
慌てて飲み口を拭こうとする彼に、麗子は彼の手をそっと包み込むようにして、体を折り曲げてきた。
麗子の艶やかな髪が、ほのかに薫るフローラル系の香りが、彼の鼻腔ををくすぐる。
「うん。やっぱり、美味しい。どうなさったの? 震えてらっしゃるの?」
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