「このたまご焼きはね、由香里が作ったんだよ。先生、好きだもんね。砂糖を入れてあるから、あま~いよ」
「そりゃあ、ありがとう。嬉しいよ、ホントに」
「そうか、そうか。由香里のお手製か。それじゃあ、お父さんもご相伴に預かろうかな」
「だめえ! 少ししかないから、先生だけなの」
手を出そうとする父親に対して、慌ててゆかりが止めた。
数個の卵を黒こげにしてしまっての、上手にできたわねと母親のお墨付きが出た卵焼きなのだ。
「そうか、そりゃ残念だ」
彼が皿を差し出そうとすると、母親が笑いながら
「いいんですよ、先生。辛党の主人には、甘い物はだめなんです。
冗談なんですから、主人の。あなたも、からかわないでくださいな」
と、父親を窘めた。
「いやいや。由香里の手料理は、初めてだからなあ。やっと、料理をしてくれるようになったんだな」
「ちがうよ! もうなんども、お手伝いしてるよ。ねえ、お母さん」
頬を膨らませながら、母親に同調を求めた。
「ええ、ええ。お手伝いしてくれてますよ。特に、先生が来て頂けるようになってからは。先生に言われたんですものね」
嬉しそうに、母親が相槌を打った。
「そうか。まったく、先生さまさまだな」
「いえ。ぼくは、別になにも‥‥」
彼は頭を掻きながらも、満更でもなかった。
とにかく父親に対して点数を上げたいという打算が働いていた。
そんな己に対して、卑しいぞと思う気持ちがありはした。
吉田との会話が頭を過ぎった。
「そんなもんだろう。コネは大事に為なくちゃいかんさ。もっとも、意外ではあるがな。君にそんなことができるとは」
「ぼくだって、聖人君子じゃないんだぜ」
「そりゃあ、ありがとう。嬉しいよ、ホントに」
「そうか、そうか。由香里のお手製か。それじゃあ、お父さんもご相伴に預かろうかな」
「だめえ! 少ししかないから、先生だけなの」
手を出そうとする父親に対して、慌ててゆかりが止めた。
数個の卵を黒こげにしてしまっての、上手にできたわねと母親のお墨付きが出た卵焼きなのだ。
「そうか、そりゃ残念だ」
彼が皿を差し出そうとすると、母親が笑いながら
「いいんですよ、先生。辛党の主人には、甘い物はだめなんです。
冗談なんですから、主人の。あなたも、からかわないでくださいな」
と、父親を窘めた。
「いやいや。由香里の手料理は、初めてだからなあ。やっと、料理をしてくれるようになったんだな」
「ちがうよ! もうなんども、お手伝いしてるよ。ねえ、お母さん」
頬を膨らませながら、母親に同調を求めた。
「ええ、ええ。お手伝いしてくれてますよ。特に、先生が来て頂けるようになってからは。先生に言われたんですものね」
嬉しそうに、母親が相槌を打った。
「そうか。まったく、先生さまさまだな」
「いえ。ぼくは、別になにも‥‥」
彼は頭を掻きながらも、満更でもなかった。
とにかく父親に対して点数を上げたいという打算が働いていた。
そんな己に対して、卑しいぞと思う気持ちがありはした。
吉田との会話が頭を過ぎった。
「そんなもんだろう。コネは大事に為なくちゃいかんさ。もっとも、意外ではあるがな。君にそんなことができるとは」
「ぼくだって、聖人君子じゃないんだぜ」
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