20日(日)。昨日の日経朝刊に次のような記事が載っていました
「東京都は18日、クラシック音楽や演劇など観衆が静かに見ることが多い「大声なし」のイベントについて、開催条件を緩和すると発表した。施設の定員が5000人以下の場合は定員まで入場できるようになる 従来は定員の半分まで認めていた。定員5000人を超える施設で入場できる上限は5000人とした」
サントリーホールの定員が2000人強なので、ほとんどのコンサートホールは上記の条件を満たしています 引っかかるのは東京国際フォーラムのホールAくらいでしょう これで各オーケストラは会場いっぱいの集客が出来るので めでたしめでたし ですが、オリンピック絡みで再度コロナ感染が拡大し、また緊急事態宣言が発出されたりすると元の木阿弥になってしまいます 政府にはデータに基づいてしっかりとかじ取りをしてほしいと思います
ということで、わが家に来てから今日で2353日目を迎え、中国国務院(政府)は18日の常務会議で、産児制限を定めた「人口・計画出産法」の改正案をまとめたが、2020年の出生数が過去最少に近い水準まで減少していることを背景に、1組の夫婦に3人目の出産を認める内容とみられる というニュースを見て感想を述べるモコタロです
中国政府は 3人目を産んでも育てる環境が整備されていると自信をもって言えるか
昨日、東京芸術劇場コンサートホールで読売日響「土曜マチネ―シリーズ」第237回公演を聴きました プログラムは①ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲、②シューマン「ピアノ協奏曲イ短調作品54」、③チャイコフスキー「交響曲第5番ホ短調作品64」です 演奏は②のピアノ独奏=反田恭平、指揮=セバスティアン・ヴァィグレです
チケットは早々に完売になったそうです 反田恭平人気を反映しているのでしょう 入場制限って何?・・・と言いたくなるほど よく入りました
オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの読響の並び。コンマスは小森谷巧、その隣は長原幸太というダブルコンマス態勢で臨みます
ヴァィグレが登場すると大きな拍手が湧き起こりました コロナ禍の影響で外来指揮者の来日中止が相次ぎ、代演に次ぐ代演にうんざりしている聴衆にとって ヴァイグレは信頼感のある常任指揮者です 「コロナだろうが何だろうが、常任指揮者としての責任を果たす」という強い姿勢を貫くヴァィグレを見ると、とても頼もしく感じます
1曲目はワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲です 歌劇「タンホイザー」はリヒャルト・ワーグナー(1813‐1883)が1843年から45年にかけて作曲したオペラです 中世に実在したミンネゼンガーの歌合戦を題材とし、ウェヌス(ヴィーナス)の虜となったタンホイザーの罪が、領主の娘エリーザベトの純愛と死によって贖われるというストーリーです 「序曲」は、本編の主題やモチーフ(動機)を用いてオペラ全体を集約した内容となっています
ヴァィグレの指揮で演奏に入ります。冒頭、ホルンを中心に「巡礼の合唱」のテーマが奏でられますが、松坂隼を中心とするホルンセクションが素晴らしい ヴィオラによる「歓楽の動機」ではゾクゾクします 金管を中心に展開したクライマックスはドイツ的な重心の低い堂々たる演奏でした
ピアノがセンターに運ばれ、反田恭平を迎えます 1994年生まれといいますから まだ27歳ですが、その風貌と落ち着き振りは一周り上のように見えます モスクワ音楽院を経て、現在はショパン音楽大学で学んでいます
2階席後方からはちょっと見えにくいのですが、ピアノのボディに FAZIOLI の文字が見えます 1981年創業のイタリアのピアノメーカーの楽器です スタインウェイでも、ベーゼンドルファーでも、ヤマハでもない 振興メーカー FAZIOLI を使うところに彼のこだわりが見えます
演奏するのはシューマン「ピアノ協奏曲 イ短調 作品54」です この曲はロベルト・シューマン(1810‐1856)が1841年に第1楽章を、1845年に第2、3楽章を作曲、1846年1月1日にライプツィヒのゲヴァントハウスで初演されました 第1楽章「アレグロ・アフェットゥーソ」、第2楽章「インテルメッツォ:アンダンティーノ・グラツィオーソ」、第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります
ヴァィグレの合図で第1楽章が独奏ピアノの強打で開始されます 反田のピアノはどこまでも明快です 強打でも音は濁らず、弱音でもはっきり聴きとることができます 即興的な趣を生かした柔軟な演奏を展開します 第2楽章では抒情的でファンタジックな演奏を繰り広げ、第3楽章になだれ込みます 私はピアノ協奏曲の中ではこの曲が一番好きと言えるほど好き(特に第3楽章)なのですが、反田は、こう弾いて欲しいと思うように弾いてくれました 緩急自在ながら流れが自然で、思わず身を乗り出して聴きたくなってくる魅力的な演奏でした ヴァィグレ ✕ 読響がしっかり反田を支えました
反田はアンコールにシューマン(リスト編)「献呈」を 肩の力を抜いて いとも鮮やかに演奏、聴衆を再び興奮の坩堝に巻き込みました
プログラム後半はチャイコフスキー「交響曲第5番 ホ短調 作品64」です この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840‐1893)が1888年に作曲、同年11月17日にサンクトべテルブルクで初演されました 第1楽章「アンダンテ ~ アレグロ・コン・アニマ」、第2楽章「アンダンテ・カンタービレ・コン・アルク―ナ、リチェンツァ 〜 モデラート・コン・アニマ ~ アンダンテ・モッソ 〜 アレグロ・ノン・トロッポ」、第3楽章「ワルツ:アレグロ・モデラート」、第4楽章「フィナーレ:アンダンテ・マエストーソ ~ アレグロ・ヴィヴァーチェ ~ モルト・ヴィヴァーチェ ~ モデラート・アッサイ・エ・モルト・マエストーソ ~ プレスト」の4楽章から成ります
ヴァィグレの指揮で第1楽章に入ります 冒頭、クラリネットで奏でられる「運命の主題」が曲全体を支配します この楽章全体が暗く沈むような曲想です。第2楽章に入ると、独奏ホルンが傷心を慰めるかのように甘美なメロディーを奏でますが、松坂隼の独奏が素晴らしい 第3楽章はチャイコフスキー特有のワルツです。つくづくチャイコフスキーはメロディーメーカーだと感じます 第4楽章に入ると、第1楽章で暗く響いた「運命の動機」が明るく力強い堂々たる音楽として生まれ変わって登場します これがチャイコフスキー・マジックです 金管の咆哮、弦の渾身の演奏を中心にダイナミックな演奏が繰り広げられ、壮大なフィナーレを飾ります
満場の拍手がヴァィグレと読響の面々に送られました
終演後、コロナ感染拡大防止のための「時差退場」への協力依頼のアナウンスがありましたが、「そんなことはどこ吹く風」といった客が多く、「最初に1階席のお客様・・・」とアナウンスをしている最中に、そそくさと出口に向かう2階席の客が後を絶ちませんでした 他の在京オケのコンサートと比べ、読響の聴衆(あえて会員とは言わないが)はマイペースの人が多いのだろうか、と疑ってしまいました