7日(月)。わが家に来てから今日で3128日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は4日、年2回に分けて実施している徴兵の対象年齢の上限を来年1月以降、27歳から30歳に引き上げる改正法案と、召集令状が出された国民の出国を禁じる法案に署名し、法律が成立した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
大義のない戦争に駆り出され 戦死しなければならないロシアの若者も可哀そうだ
昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールで「フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2023」参加公演「新日本フィルハーモニー交響楽団 ~ 広上淳一のザ・ベートーヴェン!」を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「交響曲第6番 ヘ長調 作品68」、②同「交響曲第5番 ハ短調 作品67」です
本公演は本来「新日本フィル ~ 道義のザ・ベートーヴェン!」のタイトルで、井上道義氏の指揮が予定されていましたが、同氏が結石性腎盂腎炎によりドクターストップがかかったため、急きょ指揮者が変更になったものです
プログラム冊子に掲載された井上氏のメッセージに「誰がなんと言おうと来る気があれば来る道義ですが、吐き気が続き、人前で話す・・・それもベートーヴェンの指揮をするのは・・・無理です、お許しを。親愛なる広上君が代役を引き受けてくれたのは本当にありがたい しかも彼は俺の考えた趣向をそのまま取り入れてくれるそうだ。ありがとう
」と書かれています
さて、どんな趣向が凝らされているのか見ものです
16時開演の公演に先立って、15時から弦楽五重奏による「プレコンサート」が開かれました プログラムは①モーツアルト「ディヴェルティメント ニ長調 K.136」、②モンティ「チャールダッシュ」です
演奏はヴァイオリン=崔文洙(ソロ・コンマス)、丹羽紗絵(8月から第2ヴァイオリン首席)、ヴィオラ=瀧本麻衣子(首席)、チェロ=服部誠(客演:東京フィル首席)、コントラバス=菅沼希望(首席)です
当初は弦楽四重奏で演奏する予定だったようですが、最終的にコントラバスを加わりました
5人の演奏でモーツアルトのK.136の演奏に入ります 崔コンマスのリードのもと、軽快な演奏が繰り広げられましたが、初めて聴く丹羽紗絵さんの躍動感あふれる演奏が特に印象に残りました
2曲目のチャールダッシュは崔コンマスの超高速演奏を4人がしっかり支え、聴衆を興奮の渦に巻き込みました
さて、本番です。デジタル・サイネージに表示された「完売御礼」の通り、会場は満席です 間違いなく「井上道義」の名前で発売開始間もなく完売になったものです
演奏にあたり、広上氏と池田卓夫氏による「プレトーク」がありました それによると井上氏はすでに退院したようですが、指揮ができるまでには回復していないようです
井上氏が「彼(広上氏)は俺の考えた趣向をそのまま取り入れてくれるそうだ」と書いていることに関して、広上氏が どういう趣向なのかをユーモアを交えて解説しました
楽器の配置と演奏人数に秘密があるようです
そのうち楽員が三々五々入場し 配置に着いたのでトークは終了となりました
1曲目はベートーヴェン「交響曲第6番 ヘ長調 作品68」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1807年から08年にかけて作曲、1808年12月22日にアン・デア・ウィーン劇場で「交響曲第5番」とともに初演されました
本作はベートーヴェン自身により当初「田園生活の思い出」、その後「田園交響曲」と名付けられました
この作品の大きな特徴は①それまでの4楽章でなく5楽章構成となっていること、②第3~第5楽章が続けて演奏されること、③トロンボーンやピッコロが使用されていること、④最終楽章が静かに終わること、⑤「標題交響曲」の先駆けとなる作品で、各楽章に内容を示す説明の言葉が記されていること、などです
この作品は第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ(田舎に着いた時の愉快な感情の目覚め)」、第2楽章「アンダンテ・モルト・モッソ(小川のほとりの風景)」、第3楽章「アレグロ(田舎の人たちの楽しい集い)」、第4楽章「アレグロ(雷雨、嵐)」、第5楽章「アレグレット(牧歌 ~ 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち)」の5楽章から成ります
オケは6型の小編成で、左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリン、その後ろにコントラバスという対抗配置をとります。コンマスは崔文洙です 第2ヴァイオリンのトップには丹羽紗絵が、チェロのトップには東京フィルからの客演で服部誠がスタンバイします
広上の指揮で第1楽章に入ります。弦楽器が少ないだけに透明感のある演奏が際立ちます フルート、オーボエ、ファゴットの演奏が冴えています
第2楽章ではオーボエとファゴットの掛け合いが楽しく聴けました
演奏の途中で、舞台下手からトランペット奏者(2)が入場し、第1ヴァイオリンの下手の壁際でスタンバイし、演奏に加わります
さらに、第3楽章に入る直前にトロンボーン(2)、ピッコロ、ティンパニ奏者が入場しトランペット奏者に並びます
この「バンダ」的な編成は第4楽章「雷雨、嵐」の場面で大活躍します
以上の一連の流れによる演奏形式が、井上氏が求めていた”趣向”です
広上は小柄な身体ながら、精力的かつスケールの大きな指揮で、とても6型とは思えない迫力のある演奏を新日本フィルの楽員から引き出していました
プログラム後半はベートーヴェン「交響曲第5番 ハ短調 作品67」です この曲は1807年から08年にかけて作曲、1808年にアン・デア・ウィーン劇場で「交響曲第6番」とともに初演されました
この作品の大きな特徴は①ハ短調の第1楽章からハ長調の第4楽章へ、「暗から明へ」「闘争から勝利へ」という音楽の流れ、②冒頭の「運命の動機」が全楽章に登場し統一感を持たせていること、③交響曲史上初めてピッコロ、コントラファゴット、トロンボーンを採用したことなどです
この曲は第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート」、第3楽章「アレグロ」、第4楽章「アレグロ ~ プレスト」の4楽章から成ります
弦楽器が「田園」の2倍以上の16型に拡大します 管・打楽器を含めて100人規模の大編成は見た目だけでもインパクト大です
古典派の交響曲で16型は見たことありません
弦楽器だけを見れば、まるでマーラーやブルックナーを演奏するような編成です
広上の指揮で第1楽章が集中力に満ちた迫力のある演奏で開始されます オーボエ、ファゴット、フルート、クラリネットといった木管楽器が冴えています
穏やかな第2楽章を経て、第3楽章では弦楽器を中心に重心の低い演奏が展開し、ホルンが咆哮します
そして、底辺を蠢くような音楽が続き、次第に盛り上がり、頂点に達して最終楽章に移行します
これは音楽における「勝利宣言」です
広上はアグレッシブな指揮で各セクションを煽り立て、オケの持てる力を存分に引き出します
ド迫力の演奏でした 文字通り満場の拍手とブラボーの嵐が広上氏とオケの面々に押し寄せ、カーテンコールが繰り返されました
この日の演奏は、ほぼ同時期に並行して作曲され 同じ日に初演されたベートーヴェンの「第6番」と「第5番」の性格の違いをオーケストラの規模と音量で表すとともに、ベートーヴェンの音楽の先進性を、新たに採用した楽器(トロンボーン、ピッコロなど)を視覚的に際立たせることによって表現しました
井上氏の意を汲んで演奏で結果を出した広上氏の誇らしい姿を見ると、井上氏のバトン(指揮棒)は最適任者に渡されたと思わずにいられません 胸のすくような素晴らしい演奏でした
さて、プログラム後半の「第5交響曲」の第1楽章が始まって間もなくのことでした すぐ後ろの列の高齢男性2人がいきなり大きな声で会話を始めたのです
どうやら演奏のテンポについて論評しているようでした
3列前の人が振り返ったくらい大きな声だったので、私は思わず振り返り2人を睨めつけ”黙れビーム”を飛ばしました
演奏中 声を出すわけにはいきませんから
それで何とか収まりましたが、私の怒りは収まりません
演奏の真っ最中に大きな声で会話をする馬鹿がどこにいるか
これほど規格外の非常識は見たことがない
だから”老害”と言われるんだ
もう二度とコンサート会場に来るな
てなもんです
実を言うと、「プレコンサート」の崔氏のトークも この2人のおしゃべりのせいでほとんど聞き取ることが出来ませんでした 演奏中ではないのでクレームはつけませんでしたが、本番を前にいやーな予感がしました
予感が当たってしまったわけで、背中に悪寒が走りました
先日は同じ会場の2階席で、演奏直前に駄々をこねて、床に寝転がって演奏を聴いていたオバさんがいたようですが、どうもこの酷暑で自律神経が大幅に狂っている人間が増えているようです 少なくとも、同じ種族にならないように気をつけねば、と思う今日この頃です