人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

戸田奈津子・金子裕子著「Keep on Dreaming」を読む ~ 通訳・字幕翻訳者として活躍する戸田さんの ”夢を追い続けた人生”

2023年08月18日 06時24分29秒 | 日記

18日(金)。わが家に来てから今日で3139日目を迎え、2024年米大統領選の民主党候補指名争いで、再選を目指すバイデン大統領(80)の対抗馬を擁立すべきだとの意見が党内で浮上しているが、手を挙げる民主党有力者ないないままである  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     高齢もあるし 失言もあるし 息子の不祥事もあるし 優秀な人材が立候補してほしい

     

         

 

昨日、夕食に「蒸しジャガ  タラコバター」「生野菜サラダ」「豆腐とオクラの味噌汁」を作りました 息子が「パセリの卵とじ」を作ってくれたので「蒸しジャガ~」に添えました あとは、娘が北海道出身の会社の同僚から仕入れてきたトウモロコシをレンジでチンしていただきました さすがに北海道のトウモロコシは最高に美味しかったです

 

     

 

         

 

戸田奈津子・金子裕子著「Keep  on  Dreaming」(双葉文庫)を読み終わりました 戸田奈津子は映画字幕翻訳者。東京都出身。津田塾大学卒業後、生命保険会社に就職するも1年半ほどで退社。翻訳や通訳などのアルバイト生活を続けながら映画字幕翻訳者を目指した。「地獄の黙示録」(1979年)で本格的に字幕翻訳デビュー 以後、数々の映画字幕を手がけ、ハリウッドスターとの親交も厚い 金子裕子は映画ライター。栃木県出身。女性誌を中心に多くの媒体で映画紹介やインタビュー記事を執筆している

 

     

 

本書は2014年に刊行された「KEEP  ON  DREAMING 戸田奈津子」をもとに加筆修正のうえ 文庫化したもので、金子さんが戸田さんにインタビューしたものをまとめています

本書は次の各章から構成されています

プロローグ「通訳引退 トム・クルーズ」

第1章「生い立ち 戦争 学生時代」

第2章「就職 アルバイト コッポラ監督との出会い」

第3章「字幕翻訳 通訳 セレブとの交流」

第4章「旅行 グルメ」

第5章「戸田奈津子 ✕ 金子裕子 対談」

あとがき

プロローグを読むと、2022年5月にトム・クルーズが来日した時に、戸田奈津子さんが通訳を引退したことが分かります 戸田さんはもともと「通訳がやりたかったわけではなく、映画の字幕翻訳がやりたかった」として、通訳は辞めるが、字幕翻訳については「やっぱり大好きな仕事ですから、苦にならない。字幕を作っていると楽しくて、時間を忘れます。できる限りは続けたいですね」と語っています

「生い立ち」では、戸田さんが生まれて1年ほどで父親が出征し、帰還しないまま亡くなってしまったので、祖母と母親の手で育てられたとのことです 幼稚園から高校まで御茶ノ水女子大付属に通い、津田塾大学で英語を学んだそうです 卒業後は第一生命の社長秘書として採用されますが、「あまりにも退屈で」1年半で辞め、翻訳や通訳などのアルバイトで糊口をしのぎ、ほぼ20年が経ったそうです その間、できるだけ多くの映画を観て、字幕翻訳者の先駆者・清水俊二氏に手紙を書いたりしたのが功を奏し、やっと希望する道が開けたとのこと

最初は映画監督や出演者の「通訳」の仕事がメインだったようですが、当時はプロの通訳斡旋会社もないし、”バイリンギャル”と称されるような帰国子女もあまりいなかったこともあり、声がかかったようです 戸田さんは書きます

「あんなにヘタな英語でもなんとか務まったのは、やはり長年、映画を観続けてきたおかげだと思います 原題を聞いてすぐに日本語の題名に置き換えられる、監督や俳優のそれまでの仕事をある程度は知っていることが大事なのです たとえばフェリーニが今までにどんな映画を作り、どんな評価をされているかを知っているか、いないか。そこが命の通じた通訳の分かれ目になるのです

これがプロフェッショナルの心構えというものでしょう

ところで、字幕の存在を意識したのは高校時代に観た「第三の男」(1952年)だそうです

「ジョセフ・コットンが演じる三文文士が、ウィーンを訪ねる。ところが、彼を招いた親友ハリーはすでに死んでいる その状況に納得のいかないコットンは、ハリーの死の真相を調べるうちにナイトクラブでボベスコというルーマニア人の闇屋に会う。そこで、コットンが『事件には第三者の男がいたようだ』というと、闇屋はウィスキーのグラスを持ちながらシブい顔をして「今夜の酒は荒れそうだ」と言う この「酒が荒れる」という男っぽい台詞が、女だけの環境で育った私にはなじみが薄くて、じつにカッコよく聞こえました 英語ではどんな風に言っているか気になり、繰り返し観ながら耳をそばだてて何とか聞き取った原文が『I shouldn't drink it. It makes me acid.』(私はこれを飲んではいけない。これは私を acid にするから)。『acid』とは『酸性』の意味であり、同時に『不機嫌』『気難しい』の意味もある。翻訳者にとっては頭の痛いダブル・ミーニングの台詞ですが、それを『今夜の酒は荒れそうだ』と訳す。これぞ、名訳! 当時の私がそれをハッキリ意識したわけではありませんが、『字幕とは直訳するのではなく、台詞のエッセンスを上手く日本語に置き換える作業なのだ。おもしろそう!』ということは直感しました その記憶がずっと心に残っていたからこそ、就職活動をするときに、字幕翻訳の仕事をしたいという思いが芽生えたのでしょう

解らないことは徹底的に調べ尽くす。解った時の喜びは何物にも代えがたいものです 好きなことならなおさらです

「第三の男」(1949年:キャロル・リード監督)が取り上げられたので、第三の男=ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)のテーマ音楽を聴くことにします 作曲&チター演奏=アントン・カラスです

 

     

     

 

戸田さんが字幕翻訳者として初めて自信を付けたのはマリリン・モンロー主演「荒馬と女」だそうです

「冒頭のシーンは、離婚したばかりのロズリン(モンロー)が事故を起こしてしまい車を売ろうとする そんな彼女を見かねて世話好きの下宿のおばさんが自動車屋に車を引き取らせようとして言う台詞。『I'ts brand new,you know.She ought to get very good price for it.』。普通に訳せば『ほら新車なのよ。いい値がつくようにしてあげてね』という感じなのですが、なにせ文字数には制限がある そこで私は『新車なのよ。値をはずんあげてね』と訳しました それをご覧になった清水先生は、『これはうまい訳だね』とおっしゃったあと、『君なら、(字幕を)できるかもしれない』と付け加えて下さって・・・。清水先生の、このひと言には、本当に勇気づけられました

トム・クルーズ、フランシス・コッポラをはじめ世界的な映画監督や俳優との交友録は、凄いとしか言いようがありません それは彼女が「通訳」と「字幕翻訳」を両立させていたからこそ親密な関係が出来たのです

戸田さんは洋画黄金時代には年間50本もの字幕翻訳を手掛けたそうです 人生のほとんどを映画に捧げた戸田さん。カッコイイです

コメント
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