29日(火)。わが家に来てから今日で3577日目を迎え、第50回衆院選は投開票から1夜明けた28日、全ての議席が確定し、自民と公明両党は公示前から64議席減となって過半数(233議席)を割り込んだ というニュースを見て感想を述べるモコタロです
問題は誰が新首相になるかだ 無法者プーチンや金正恩に対し互角に張り合えなきゃ
昨日、夕食に「豚肉のクリームシチュー」「生野菜とアボカドとチーズのサラダ」を作りました 寒い夜だったのでシチューは温まりました
本間ひろむ著「日本の指揮者とオーケストラ ~ 小澤征爾とクラシック音楽地図」(光文社新書)を読み終わりました 本間ひろむは1962年東京都生まれ。批評家・ジャーナリスト。大阪芸術大学芸術学部文芸学科中退。著書に「日本のヴァイオリニスト」「日本のピアニスト」「アルゲリッチとポリーニ」など多数あり
著者は「まえがき」で概要次のように述べています
「リハーサルは言葉で伝える言語コミュニケーションであり、指揮者の性格やパーソナリティがそのまま出る 一方、演奏会本番では指揮者は観客に背中を見せ、無言でタクトを振る。これすなわち、非言語コミュニケーションの極致である この使い分けが指揮者の腕の見せ所であり、聴き慣れたあの名曲が違って聴こえてくるというマジックはここから生まれる 非言語情報に対するセンスを磨かないと職業的に音楽家にはなれない。この非言語情報に対するセンスを磨くことでしか『教養』は獲得できない」
「子供の頃からピアノを習い、それ以外の楽器をとことんさらい、気がつけば数千万円と20年前後の時間(というコスト)をかけて座っている そんなプロの音楽家が100人、舞台の上に座っているのがオーケストラ その100人の猛者を一気に束ねるのが指揮者というお仕事。両者が一体となって作られる音楽のなんと豊かで、贅沢で、心躍ることか」
上記の言葉は指揮者が求められる資質と役割を端的に表しています 本書は聴衆を音楽の”沼”に引きずり込んだ日本の指揮者とオーケストラの物語です
本書は次の各章から構成されています
序 章「もしも、アウグスト・ユンケルが来日しなかったら」
第1章「ベルリン・フィルを振った男たち」 ~ 近衛秀麿と山田耕筰
第2章「関西楽界のデベロッパー」 ~ 貴志康一と朝比奈隆
第3章「鋼の師弟」 ~ 斎藤秀雄と小澤征爾
第4章「違いがわかる男と大きいことはいいことだ」 ~ 岩城宏之と山本直純
第5章「炎のコバケンとみちよし先生」 ~ 小林研一郎と井上道義
第6章「カラヤンの教え子、バーンスタンの弟子」
終 章「ブザンソンを制した新世代指揮者たち」
付 録「日本の指揮者とオーケストラ・ディスコグラフィ30」
序章から第2章までは、日本のクラシック界の黎明期に活躍した指揮者たちが紹介されています この辺は著者の得意とする分野のようで、筆者による「日本のヴァイオリニスト」や「日本のピアニスト」でも筆が冴えています
蛇足ですが、新交響楽団(現・N響)を巡る近衛秀麿と山田耕筰の戦いについては、N響の機関誌「PHILHARMONY」に連載されている片山杜秀氏による「N響百年史」(10月号で第49回)に詳細が書かれていて興味深いものがあります
面白くなるのは第3章以降で、日本の指揮界に大きな足跡を残した斎藤秀雄とその門下生たちの活躍です 「トウサイ」と呼ばれて親しまれ恐れられてきた斎藤秀雄の門下生には、小澤征爾を筆頭に、岩城宏之、山本直純、飯守泰次郎、秋山和慶、井上道義、尾高忠明、円光寺雅彦、高関健、大友直人らがいます だれ一人 似ていない、超個性派揃いであるところが凄いと思います
第3章では小澤征爾が単身ヨーロッパに乗り込んで指揮者としてのキャリアを積んでいく有様が、同氏の「ボクの音楽武者修行」の引用を中心に紹介されています
第4章では、N響による小澤征爾ボイコット事件、日本フィル改組事件(新日本フィルの誕生)などが紹介されています
第5章では、コバケンがブタペストの国際指揮者コンクールに応募した時、締め切りを過ぎていたが、何とか食いついて受け付けてもらい、結果的に優勝したこと それは小澤征爾がブザンソン国際指揮者コンクールの時に書類の不備で締め切りに間に合わなかったが、何とか手を尽くして受け付けてもらい、結果的に優勝したことが紹介され、著者は「友よ、本気で望むものがあったら簡単に諦めてはイケナイのだ」とカツを入れています また、井上道義と尾高忠明は桐朋学園大学時代の同期生だが、井上が今年いっぱいで引退するのに対し、尾高は活動を続けるという生き方の違いを紹介しています 第6章では、カラヤンの指導を受けた指揮者として小澤征爾、小泉和裕、高関健がいるが、山下一史も一時アシスタントをしていたとのことです
第6章で紹介されているブザンソン国際指揮者コンクールにおける日本人の優勝者は、
小澤征爾(1959)、松尾葉子(1982)、佐渡裕(1989)、沼尻竜典(1990)、曽我大介(1993)、阪哲郎(1995)、下野竜也(2001)、山田和樹(2009)、垣内悠希(2011)、沖澤のどか(2019)の10人です
付録「日本の指揮者とオーケストラ・ディスコグラフィ30」では「ベスト30」ではなく「レコメンド30」として紹介しているところがユニークです 古くは近衛秀麿指揮近衛交響楽団によるベートーヴェン「交響曲第5番」から、新しくは沖澤のどか指揮読売日響によるシベリウス「交響曲第2番」まで30枚が詳細な解説とともに紹介されています
個人的には既に知っていることも多々ありましたが、指揮者とオーケストラに絞った解説は、これまでの知識を整理するうえで参考になりました 同じ著者の「日本のヴァイオリニスト」「日本のピアニスト」とともに、クラシック・ファンに限らず、広く音楽ファンにお薦めします
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます