27日(金)。昨日、飯田橋のギンレイホールで是枝祐和監督による「そして父になる」を観ました
物語は 「大手建設会社に勤めるエリート社員で、都心の高級マンションで妻と一人息子と暮らす野々宮良太(福山雅治)は、ある日、産院からの電話で、6歳の息子が取り違えられた他人の子だと知る 妻のみどり(尾野真千子)は、母親であるのに見分けられなかったとして自分を責め、良太は性格が優しすぎる息子に抱いていた不満の意味に気づく 一方の家族である斉木雄大(リリー・フランキー)・ゆかり(真木よう子)夫妻は群馬県で小さな電気店を営みながら3人の子どもを育てている。産院側の弁護士は、過去の取り違え事件では100%血のつながりを取ると言うが、息子を大事に育ててきたみどりや、賑やかな家族を築いてきた斉木夫妻は、育ててきた子を手放すことに苦しむ 良太だけが、出来るだけ早く血のつながりのある子と取り替えて育てた方がこれからの長い人生を考えるとベターだ、と思っている。そして、ついに実験的に”交換”が始まり、血のつながった親子同士の生活が始まる。しかし、それからが良太にとって”父親”としての資質が試される試練の生活だった」
この映画が問うているのは、もし自分自身に同じような問題が降りかかったとき、どういう選択をするのか、ということです 「血のつながり」を選択して、生みの親として立場をとるのか、あるいはこれまでの6年間自分の子として愛情を注いできたという実態を選択して、育ての親としての立場をとるのか、ということです これは非常に重いテーマです。誰もが簡単には結論が出せないと思います
この映画は第66回カンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞した作品です 審査委員長はスティーヴン・スピルヴァーグ監督ですが、映画祭での上映後、10分以上にわたるスタンディングオベーションが続いたそうです 世界共通の”家族とは何か”というテーマを真正面から取り上げた作品として評価されたのだと思います
さて、私が映画を観て興味があるのはどんな音楽が使われているのかということです この映画では重要な局面でバッハの音楽が静かに流れます。エンドロールで流れるのはバッハの「ゴールドベルク変奏曲」の「アリア」で、ピアノ独奏はカナダの奇才グレン・グールドです ここで困った問題が1つあります。グールドの弾く「ゴールドベルク変奏曲」の録音には2種類あるのです 『旧盤』が1955年の録音、『新盤』がその26年後の1981年の録音です
(旧盤:1955年録音のCD)
(新盤:1981年録音のCD)
さて、この映画で使われたのはどちらの演奏なのか?それは実際にCDを再生してみて判りました 旧盤に間違いないでしょう 2つの演奏の大きな違いはテンポです。旧盤が比較的ノーマルなテンポであるのに対し、新盤はテンポが極端に遅いのです 今にも止まりそうな、と言ってもよいほどのゆったりとしたテンポなのです それにつけても、是枝監督はバッハがお好きなのでしょうか
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