19日(火)。昨日、朝出勤すると卓上に1枚のハガキが置かれていました 新日本フィル特製の絵ハガキで、宛名は当ビルの住所で当社の”音楽部 Mr.tora”となっています。”音楽部 Mr.tora”でハガキが届くなんて、私も有名になったものです 裏を見ると、文末に差出人として”禿”の文字がありました
ペンネーム禿さんは、新日本フィル「室内楽シリーズ」の定期会員で、toraのブログに時々コメントを寄せて下さっている方です ハガキの文面には、14日の室内楽コンサートを、私と同じ8列の席で聴いたと書かれていました。私が1番で禿さんが13番でした 禿さんとは何度かブログ上でやり取りしていますが、まだ直接お目にかかって話をしたことがありません 文末に「10月24日にまたご一緒しましょう~!」とあったので、禿さんも次の室内楽シリーズ定期会員を継続することが分かりました。私も継続します。いつかお目にかかる時があるでしょう
このたびの絵ハガキは嬉しい”サプライズ”でしたが、それにしても、なぜ、今回はブログにコメントではなくて、絵ハガキだったんでしょうか・・・・・・日光の手前(イマイチ)よく分かりませんのです
閑話休題
17日の朝日朝刊に「スーチー氏 21年後のノーベル平和賞演説」の見出しによる記事が載りました記事によると,
「ミュンマーの民主化運動指導者アウンサンスーチー氏(66)が16日,ノルウェーの首都オスロの市庁舎で,1991年に授与されたノーベル平和賞の受賞演説に立った ”完全な世界平和の実現は到達できない目標だ.でも,私たちは救いの星に導かれる砂漠の旅人のように,平和を目指して旅を続けなければならない”と訴えた スーチー氏の受賞は,軍事政権が民衆弾圧をしていた当時,非暴力で民主化と人権のために戦っていたことが評価された 軍事政権に自宅軟禁されていたため,授賞式には,英国人チベット研究者の夫マイケル・アリスさんと息子2人が代理で出席した.約21年後の今回は次男のキム・アリスさんが姿を見せた」
長期間にわたる自宅軟禁や圧力にもめげず、不屈の信念を貫き通してきたスーチーさんには頭が上がりません 一日も早く、ミャンマーに民主主義が根差し本当の意味での平和な社会が実現することを願ってやみません
閑話休題
そんなタイミングの昨夕、記者クラブの試写会で「The Lady 引き裂かれた愛」を観ました リュック・ベッソン監督、ミシェル・ヨ―主演の、アウンサンス―チ―の半生の物語です
1988年ビルマ(現ミャンマー).イギリスのオックスフォードで夫マイケル・アリス,息子のアレクサンダー,キム兄弟と幸せな家庭生活を送っていたアウンサンスーチー(ミシェル・ヨー)は,母親の看病のために久しぶりに祖国に帰ります そこでは,軍事政権が学生による民主主義運動を武力で制圧しようとしていました そんな中,「ビルマ建国の父」と死後も多くの国民から敬愛されるアウンサン将軍の娘スーチーの帰国を知った民主主義運動家たちがスーチーの元に集まり,リーダーになってほしいと懇願します ここから軍事独裁政権との長い戦いが始まります
普通の主婦だったスーチーがシェダゴン・パゴダ前広場で数十万人ものラングーン市民の前で演説するシーンは感動的です.アウンサンスーチーを演じるハリウッド女優ミシェル・ヨーは,役作りのために200時間にもおよぶスーチーの映像を入手して,容姿だけでなくスーチーの話す英語,ビルマ語を完ぺきにマスターしたといいます 映画を観れば分かりますが,彼女は本物のスーチーにそっくりです
私は不勉強で知りませんでしたが,アウンサンスーチーは1985年~86年に京都大学東南アジア研究センター客員研究員として来日しています.われわれ日本人にも身近な存在なのですね
彼女は軍事政権によって1989年からラングーンの自宅で監禁状態になります 1991年には夫マイケルの影の尽力によってノーベル平和賞が授与されます しかし,スーチーは授賞式に出席することは許されず,代わりに夫と息子たちが出席し,長男アレクサンダーが母親に代わって受賞のスピーチをします.そのシーンは感動的です
その後もスーチーは1995年から6年間自宅監禁されます.1999年3月に夫マイケルがイギリスでガンで死去しますが,スーチーは,自分がイギリスに帰国することは2度とビルマに戻れないことに等しいとして,涙を呑んで戻りません
その後もスーチーは2000年から02年まで,03年から10年まで監禁されることになります.そして遂に2010年11月13日に長い監禁から解かれ,2012年4月の議会補選に圧倒的な支持を得て当選,国会へ進出します スーチーの戦いは現在進行形なのです
さて,私が映画を観るときにいつも気にかけているのは,どんなクラシック音楽が使われているかということです この映画で使われているのは2曲だけです
最初に,オックスフォードの自宅で家族と平和に暮らしている中,夫マイケルがLPレコードに針を落とすシーンがあります.そこから流れてきたのはモーツアルトの「ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488」の第2楽章”アダージョ”です 世の中にこんなに哀しい音楽があるのか,と思うほど,どこまでも美しく,どこまでも哀しい音楽です
次に登場するのはラングーンの自宅に戻ったスーチーがピアノに向かって弾くパッヘルベルの「カノン」です 穏やかな心休まる曲です.
そして次に登場するのは,夫マイケルがホスピスに入院して死の間際にある中で流れる美しくも哀しい音楽・・・・そう,再びモーツアルトのピアノ協奏曲第23番の”アダージョ”です つまり,この曲は夫マイケルの”哀しみのテーマ”として扱われているのです
最後に登場する音楽は,ノーベル賞の受賞式で息子アレクサンダーの挨拶が終わって,会場に控えていた弦楽オーケストラが奏でるパッヘルベルの「カノン」です ラングーンの自宅でラジオから聴こえる息子のスピーチを聴きながら,スーチーがピアノで同じメロディーを弾くシーンが映し出されます.つまり,この曲はスーチーの”喜びのテーマ”として扱われているのです
たったの2曲が2回ずつ登場するだけですが,その扱いは最大の効果を上げています
原題は「The Lady」,2011年・フランス映画,2時間13分.7月21日(土)から角川シネマ有楽町,ヒューマントラストシネマ渋谷でロードショー公開されます.収益の一部は,マイケル・アリス記念基金とプロスペクトビルマに寄付されるとのことです
試写会にはこれまでにない多くの人が出席していて,時折ハンカチで目頭を押さえていました 私が最近観た映画の中で最も感動した映画です この映画を一人でも多くの人に観てほしいと心から思います
しっかし、昔~しっから夜道で狸に化かされたオジサンの悲哀噺しがありまするがぁ、とーとぅtoraさんもね~ぇ…哀韻の残響が都営三田線のトンネルにコダマする♪…うむ~っ…